東京の文化について気になるニュースが、このほど発表された。アーツカウンシル東京が、都民1100人を対象に実施した「芸術文化体験についての実態調査」によると、月に1回以上、何らかの芸術文化を体験しに外出するという人は、全体の4分の1に満たないというのだ。一方、「1年に1回程度」「1回も体験・鑑賞していない」と回答した人は4割近くにも及ぶ。8割近くもの人が「芸術文化に興味がある」と回答しているにもかかわらずである。
これは決して、東京都民が文化的な暮らしを送っていないということではない。この質問が対象としている「芸術文化体験」とは、映画館や美術館、ホールなど、実際に足を運んで参加するものに限定しているからだ。小説や漫画なら自宅でも読めるし、映画鑑賞はホームシアターでという人もいるだろう。インターネットを通じて新たな音楽と出会うことも、れっきとした芸術文化体験だ。科学技術の発展とは、実に素晴らしいものである。
しかしながら、せっかくメトロポリス東京で暮らしていることを考えると、少しもったいない気もしないだろうか。実際、先の調査では、8割以上もの人が「芸術文化を"ライブ"で体験・鑑賞することは大切」と回答している。そう、「ライブ(=生で見る)」という観点は、数え切れないほどのアートイベントが毎日開催されている東京の、大きな強みのはずだ。それでも体験の機会は少ない。その理由を問うと「お金がかかるから(48.5%)」「時間がなかなか取れないから(35.5%)」といった回答が目立つ。東京暮らしには金がかかるし、また日本人に休みがないのも周知の事実である。それならば、「芸術文化を"ライブ"で体験・鑑賞すること」は嗜好品(しこうひん)的なものとして、一般庶民は諦めるほかないのだろうか。
そこで注目したいのが、この調査を実施したアーツカウンシル東京だ。そもそもアーツカウンシル東京とは、助成事業や人材育成などを通して、都の芸術文化施策の中核的役割を担う組織だ。フェスティバルや参加型イベントなど、様々な芸術文化プログラムの主催、共催も事業の柱である。公共性の高い組織だけあって、提供するプログラムは、質は高く敷居は低くなっているので、利用しない手はないだろう。アンケートで希望の多かった「無料」のイベントや、「街中で開催」するイベントも数多く用意されている。ここでは、アーツカウンシル東京が主催や共催をしているプログラムを中心に、都内で芸術文化を体験するのにうってつけなイベントを12件紹介する。伝統文化から現代美術まで幅広いプログラムをリストしているので、ここ東京で芸術の秋を満喫してほしい。