運動に関わってきた多くの人たちと一緒に喜びを噛み締めたい
—ICANのノーベル平和賞受賞おめでとうございます。
やはり驚きですね。今年、世界で初めて核兵器を全面禁止するという核兵器禁止条約ができました。条約ですから、もちろん世界の政府が作ったんですけど、政府だけでなく、我々のような市民運動が被爆者の方々と手を取り合いながら作り出したとも思っています。そこが評価されたということですから、この運動に関わってきた多くの人たちと一緒に喜びを噛み締めたいと思っています。
—そもそもICANはどういった活動をしているものなのでしょう。
核兵器のない世界を目指す市民活動というものは無数にありますよね。ICANは、そういう世界の色々な団体を取りまとめ、ひとつの共通のメッセージを持ったキャンペーンとして展開しようと活動しているNGOの連合体です。ICANの共通の声というのは、国際条約によって核兵器を禁止し、廃絶しようということです。核兵器のなくし方というのは色々あると思いますが、私たちは条約で核兵器を持つことを廃止し、ゼロにしていこうと活動しています。この運動は2007年にスタートしたんですけど、これを始めたのはオーストラリアの医師たちでした。なぜ医師かというと、核兵器が使われた場合にそこで傷つくのは人間ですよね。人々の健康が傷つけられることを懸念した医師たちが始めたんです。その活動は世界中に広がり、2011年にはスイスのジュネーブに国際事務所もできました。ジュネーブを選んだ理由は、ここには各国の大使や軍縮関係の仕事をしている政府代表が多くいるからです。なので、ICANもここにベースを置き、色々な国の政府の人たちに核兵器を禁止する条約を作りましょうと働きかけを始めたんです。オーストラリアとメキシコが中心になって政府に働きかけたり、赤十字国際委員会も参加して、本格的に条約を作ろうというプロセスが動き出したのは2015年頃からですね。ICANは、それをバックアップしてきました。そして、条約の交渉会議が行われ、今年の7月についに条約ができたのです。
—ICANに参加している団体は世界でどのくらいあるのですか。
今は101ヶ国から468団体がICANに参加していて、そのうちの10団体が中心となって活動しています。日本のピースボートや、イギリス、スウェーデン、ノルウェー、オランダなどの団体が中心ですね。その10団体が執行部となり、色々な方針を決めるために毎週、国際電話会議で議論をしています。そこで決まった方針を、ジュネーブにある事務局が世界各国の468団体に共有します。たとえば、「このキャンペーンで行こう」や「このチラシを使って」「こういうふうに政府に働きかけてくれ」といった呼びかけをして、468団体がそれぞれに動いていくんです。
—活動資金はどうしているのでしょう。
ジュネーブの国際事務所は、熱心な国々や政府からの寄付金を受けて運営しています。民間の財団や加盟している参加団体からも寄付を受け、なんとかギリギリまかなっている感じですね。残りの活動は468団体が自分たちのお金で活動するという感じです。ですから、ピースボートの場合は、ピースボートのお金で、ピースボートとして日本でやるべきことをやってます。