チキンコルマがイギリス料理と化しているのと同様に、中華料理も日本風になっているという現状を思えば、この店名から想像するのはごく普通の中華料理店だろう。しかし、ここ東京穆斯林飯店(トーキョームスリムハンテン)では、工夫を凝らしたスペシャルな中華料理を味わうことができる。同店のメニューは全て、ハラルに対応している。豚肉がたっぷり混ざったひき肉を使用する一般的な中華料理店とは異なり、ハラル認証された牛ひき肉のみを使って作られた「麻婆豆腐」は絶品だ。
同店が提供する肉(主に牛肉)は、ハラル認証を受けたアメリカの企業と埼玉の精肉業者から仕入れている。店内には、こじんまりとしたムスリム用の礼拝スペースがあり、メニューだけでなく、店自体がムスリムフレンドリーであることがよく分かる。また、裏メニューとしてアルコール類も取り扱う。
店内は日本人と外国人の客がバランス良く混じり合い、どんな人でも注文しやすいように、メニューは日本語、中国語、英語で表記。「羊肉の水餃子」、そして「麻婆豆腐」はぜひ試してみてほしい。まるで中国の新疆ウイグル自治区のカシュガルか陝西省(せんせいしょう)の西安にいるような気分になるはずだ。
筆者と一緒に同店を訪問した、豚肉を食べず中華料理が苦手だったはずの友人は、「これが中華料理だというなら、これまでの認識を改めたい」と絶賛していた。