赤塚真一の作る料理はめったにない「ご馳走」と断言できる。静かな声で話す、眼鏡姿の赤塚は、美しさ、季節感、伝統、そして調和を重んじる日本の高級料理、懐石の東京における第一人者だ。ミシュランの二つ星を誇る外苑前の静かな店には、美しい料理を食べるのにぴったりの4つの端正な個室と、静謐な日本庭園を眺められるカウンター席がある。
赤塚が、高校を卒業したころは味噌汁も満足に作れなかったとはにわかには信じがたい。現在の彼は、熟成味噌の名手としてだけでなく、日本中から集められる、新鮮な魚や海鮮を中心とした季節の食材を組み合わせる天才としても名高い。鰹節や松茸なども赤塚の得意な素材だ。
そして、これだけ賞賛されながらも謙虚さを失わず、「まだまだ改善できるところはあるし、一生、料理を究めることに捧げたい」と言えるのが彼の凄いところだ。まさに職人、といったところだが、その味を堪能するには当然のことながら値が張る。夜の『おまかせコース』は飲み物別で2万5,000円ほどから。だが、東京でも指折りの懐石を味わえるのだから値段の価値は十分にある。