八坂神社の西楼門から徒歩3分ほど、四条通りに面している「鍵善良房(かぎぜんよしふさ)」。入れ替わりの激しい京都の繁華街にあって、江戸時代中期から祇園に店を構えている。
名物は、くずきり。もともとは店頭のほか、祇園の茶屋や芝居小屋の「南座」に出前していたのが始まりで、それが口伝てで評判になり、喫茶で提供するようになった。
最上質の「吉野本葛」を用いたくずきりは、注文が入ってから作られる。蜜は白か黒か、好みで選べる。出来立ての透明のそれは、独特の歯ごたえとのどごしの良さがあり、「これが、本当のくずきりなるものか」と思わされる。
作家の水上勉の書いた「京の味の王者」という言葉にうそはなく、折に触れて通いたくなる。手土産に、上品な味わいの干菓子(ひがし)「菊寿糖」や「鍵もち」もおすすめだ。
混み具合によってはラストオーダーの時間が早まる場合もあるので、余裕を持って入店したい。