マンハッタンは貴重な料理人を失ったが、日本は素晴らしい蕎麦職人を得た。ホンムラアン(HONMURA AN)の店主、小張幸一が2007年に、亡くなった父の店を継ぐためニューヨークの店を閉めると発表したとき、アメリカの蕎麦ファンたちは喪に服した。何年もたった今でも、小張の蕎麦の味を求めて東京の店を訪れるニューヨーカーたちがいるという(「オノ・ヨーコもそんな一人ですよ」と彼はつぶやいた)。ホンムラアンがなぜ2つの国で成功したかはすぐに分かる。蕎麦は冷たくも温かくも頼めるが、歯ごたえが完璧でとても甘味があるので、つゆを使わずに全部食べられてしまうくらい美味しいのだ。
実際、冷たい蕎麦とつゆが別になった、せいろが店の1番人気らしい。日本語と英語で書かれたメニューだけでなく、小張のしゃべりもバイリンガル対応だ。東京では蕎麦は昼に15分くらいの立ち食いでさっと食べるものという印象が強いので、のんびりディナーを食べられる蕎麦屋というのはちょっと変わっている。広々とした、モダンで明るい店内は、座ってのんびり蕎麦を楽しみたいと思う日本人や観光客を惹きつけるのに一役買っている。