靴を脱いで畳に上がった瞬間から、ぷりぷりのカニの最後の一口を食べ終わるまで、「きた福」での経験は全てが格別だ。1人に対して1キロを超える大きなタラバガニ1杯を贅沢に使い、甲羅を外し、足とはさみを順序よく一本一本さばいて提供する。
「活たらば蟹コース」(3万6,300円から)では、取り出されたカニの身を、ゆで、炭火焼、刺し身などいろいろに調理されて出てくる。ただし、すぐ気分が悪くなる人には警告しておく。カニは食べられる直前まであなたの目の前で生きている。
北海道でカニのさばき方を修業してきた店の料理人たちは、もいだカニの足を冷水に入れ、新鮮なまま出してくれる。残りの身はしゃぶしゃぶや炭火焼きなどいろいろな調理法で提供されるので、それぞれ異なる風味や歯触りを堪能することができる。カニが描かれた陶器の皿や、炭焼きのコンロを飾る美しい書など、店の細かいこだわりも素晴らしい。
きた福の食事は決して安くない。しかし、ほかでは味わえない特別な体験ができることを考えたら、価値は十分にあるだろう。