にぎやかな麻布十番商店街から外れた静かな住宅街にたたずむフランス料理店「クラージュ」を任されているのは、今最も注目されている女性シェフ・古屋聖良だ。2017年の「サンペレグリノ・ヤングシェフ」コンクールでの日本代表を務めた功績が讃えられ、Forbes JAPANの「30 UNDER 30」(世界を変える30歳未満)のアジア版アート部門の一人にも選ばれた。
その後オーストラリアの「ブレイ(Brae)」で研さんを積み「クラージュ」のシェフに就任。クラージュの料理は、芯のあるフレンチの技法の上に、軽やかで爽やかな料理が表現されている。一皿一皿に表現されている女性らしいたおやかさと華やかさが、食べるものを魅了する。
クラージュのスペシャリテの「クラージュサンド」は、古屋の原点を語れる一品だ。世界大会で日本代表として選ばれた時の料理は、鴨料理の完成度が評価された。ストレスの少ない環境で育った茨城県西崎ファームの「かすみ鴨」とトリュフを自家製パンで挟んだシンプルなもの。シンプルなだけに小麦の味わいと鴨の肉質がダイレクトに伝わってくる。
「料理人として伝えたいのは、生産者の思いを感じながら、誠意を込めて作られた食材を、楽しくお客さまに召し上がっていくこと」と古屋は語る。さりげなくも確かな彼女の思いと確かな味わいを、ぜひ体験してみてほしい。