シェフ、田中佑樹の懐石料理店、割烹伊勢すえよし。そこは、東京にいながらおいしい日本の四季の味を堪能できる場所である。カウンター5席、テーブル6席だけの小さな店に、海外からの客も我先にと予約を入れる。
田中の経歴は少し異色だ。専門学校卒業後、日本を代表する高級料亭、菊乃井で4年間、日本食を身体に叩き込んだ。その後、醤油と昆布を携えて料理を学ぶ旅に出て、15ヶ国以上を巡った。旅の途上で痛感したのが、その土地が育んだ食材がその土地の食文化を作るということ。
「和食を日本文化としてもっと発信していきたい」という思いとともに帰国した田中は、地元の三重県に戻り生産者たちとの交流を深めていった。海山の自然に恵まれ、古くから「美し国(うましくに)」と呼ばれ食材の宝庫として知られる三重県で、2015年に自身の店を構え、伊勢の食材を多用する。土地の食材を深く知り、体験した上で作り上げる彼の一皿は、その時々の季節だけでなく、古来から伝わる日本の景色、味わいを語りかけてくる。
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『東京、注目の若手シェフの店10選』