飯田橋に、日本中の「うまい!」を集めた店がある。フレンチ出身のシェフ、有沢貴司による居酒屋、ル ジャングレ(Le Ginglet)だ。「素材の力を信じている」と話す有沢の料理は、極力手数を減らした、いたってシンプルなものが多い。それでも東京のグルメな客たちが連日この店に集うのは、シンプルの奥に隠された未体験の美味を発見できるからだ。東京フレンチの名店オオハラ エ シーアイイーの厳しい現場で鍛えあげた有沢の腕は、素材を最高の状態で提供する方法を知っている。さらに現在は築地市場に必ず毎日通い、常に食材の情報を頭と身体に叩き込む。ワイナリーや酒蔵、畑や牧場、果ては猟にも同行し、食材がやってくる現場を熟知しようとする姿勢を崩さない。ドリンクのセレクトにも、彼の食に対する姿勢が表れている。セラーに並ぶ約2000本のワインは約9割がナチュラルワイン。冷蔵庫には季節の日本酒が約50種類。彼がナチュラルワインや地酒をセレクトするのも、連綿と受け継がれてきた人に語るべき哲学やストーリーがあるからだ。「料理もお酒も昔からあるものを提供したい」。長い年月を経て、研ぎすまされた料理をさらに深めていくことを自身の使命とする有沢は、味だけを伝えるのではなく、食を通じて歴史や人々の物語も語り継いでいる。
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『東京、注目の若手シェフの店10選』
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