フレンチの要素を懐石に取り入れたてるなりの料理は、一品一品が際立っている。キッチンに立つ徳本寛一は、名店鈴なりの村田明彦の下で働いた経歴の持ち主だ。
必要以上に季節に固執することはなく、毎日その日に届いたもので丁寧に料理するのが特徴で、鶏レバーのパテが入ったモナカや、ワサビがアクセントになった牛スジの茶わん蒸しなど、和食をユニークに表現した料理が楽しめる。
ウメとショウガがきいたイワシの煮物、漬けマグロと赤こんにゃく、キュウリに添えられたうま味たっぷりのなめろうなど、さまざまな本格懐石料理も絶品だ。器の周りに添えられた季節の植物も、料理を彩る。
コースの最後は、てるなりの代表料理でもある釜炊きご飯の締め。しょうゆとみりんで甘辛く味付けされた豚肉、トマトとフレッシュバジルが入っており、かき混ぜてチーズをかければ和風リゾットに早変わりする。懐石の概念を覆してくれる、ファン必見の店だろう。