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『東京国際映画祭』は、世界各国から優れた映画作品が集まる年に一度の祭典だ。今年で33回目の開催となり、2020年10月31日(土)から11月9日(月)まで行われる。例年ほどの規模のイベントや海外からのゲスト出演は減ってしまったが、国内の監督や俳優、映画人が作品を代表して参加することに変わりはない。
ここでは、旧作から新作まで、英語字幕付きの映画を紹介する。
『鈴木さん』 (2020年)
社会に翻弄(ほんろう)され追いつめられる中年男女を描くディストピア作品。「神」と呼ばれる政府の指導者が、少子化対策として発令した条例では、44歳以上の男女は市民権を失う危険性があり、未婚の場合は徴兵される。介護施設で働く独身の主人公は、不穏な運命から逃れようと結婚相手を探しに行くと、鈴木と名乗る謎の人物と出会う。
監督は佐々木想。
11月2日(月)20時20分、11月6日(金)16時5分から上映、「TOKYOプレミア2020」部門
『人情と紙風船』 (1937年)
歌舞伎の演目として知られる『髪結新三』を三村伸太郎が脚色した時代劇。わずか28歳で戦病死した昭和初期の名監督、山中貞夫の遺作である『人情と紙風船』は、パンチの効いた作品だ。日本映画には貧困や武士の名誉をテーマにした映画は少なくないが、その中でも最も影響力のある作品の一つであり、現代の観客にも響く迫力ある演技で名作と称賛されている。
11月3日(火・祝)11時45分から上映、「日本映画クラシックス」部門
『トゥルー・ノース』(2020年)
北朝鮮の政治犯強制収容所に生きる日系家族の、10年を描くアニメーション作品。母と妹とともに北朝鮮の収容所に連れて行かれた9歳のヨハン、耐えがたい状況の中で必死に生きようとする姿が描かれる。現実世界の出来事を題材にしたアニメは珍しく、人類の歴史の暗部を描いたものとなるとなおさらだ。
韓英二の国際共同制作作品である『トゥルー・ノース』は、北朝鮮の脱北者の実話に触発され、北朝鮮の収容所に監禁された家族の残酷な姿を描く。アニメであるからと言って収容所の悲惨な状況を甘く見せることなく、生き地獄を垣間見ることができる。
11月3日(火・祝)11時、11月9日(月)14時20分から上映、「ワールド・フォーカス」部門
『Japan Now 気鋭の表現者 深田晃司』短編プログラム
「ジャパン・ナウ・フォーカス」に選出された深田晃司の5作品を、短編作品集として上映。『move / 2020』(2020年)、『ヤルタ会議オンライン』(2020年)、『鳥(仮)』(2016年)、『いなべ』(2013年)、『ざくろ屋敷 バルザック「人間喜劇」より』(2006年)の5作品が上映される。
人間関係や社会への鋭い視点で知られる深田の作品群は、新型コロナウイルスが大流行している今、私たちを取り巻く世界を見つめ直すタイムリーな機会だ。
11月6日(金)11時15分から上映、「ジャパン・ナウ・フォーカス」部門
『カツベン!』(2019年)
英語字幕はないが、映画『シャルウィーダンス?』などの作品で知られる周防正行の新作『カツベン!』は注目だ。19世紀初頭の無声映画時代を舞台に、「活動弁士」になることを夢見る少年俊太郎が登場する。俊太郎が青年に成長した頃には、その夢が計画通りにはいかなかったことに気付き、偽浪人を装って盗賊団と一緒に金を盗むことに。ユーモラスで懐かしく、個性際立つ作品だ。
俊太郎役に成田凌、幼馴の梅子役に黒島結菜が主演。ゴールデングローブ賞外国語映画賞にもノミネートされた。
10月31日(土)19時から上映、特別招待作品
そのほかにも、見応えのある作品がそろった今年の『東京国際映画祭』。公式ウェブサイトから全ラインナップもチェックしてみよう。
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