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新型コロナウイルスの流行以降、需要が高まる自転車。電車やバスなど、密集空間になりやすい公共交通機関での移動を避けられるのはもちろん、自転車での移動は、運動不足の解消や気分転換にもうってつけだ。
タイムアウトUSAでは『新型コロナで需要急増、アメリカの自転車が品薄に』という記事を5月22日に掲載したが、日本の自転車ショップはどのような状況なのだろうか。谷中や吉祥寺などに店舗を構えるトーキョーバイク(tokyobike)で10年ほど働いたのち、のれん分けという形で独立して豪徳寺にショップを構えた、ニエンテとトーキョーバイク(niente と tokyobike)店主の見城ダビデに話を聞いた。
2020年3月29日で1周年を迎えたニエンテとトーキョーバイク。東京を走るために作られた自転車『tokyobike』やオリジナル商品などの雑貨販売に加え、ワークショップやレンタルバイクといったサービスも行っている一軒だ。
冒頭で出したタイムアウトUSAの記事では、「新型コロナウイルスの流行拡大防止に本格的に取り組むようになってから、アメリカでは全国的に自転車が品薄だ」「安価な自転車の在庫が少なくなっている。まだ少しは残っているが、取り合い状態で売れてしまうだろう。今のように自転車が少ない状態は、7月まで続くと考えている」と述べられているが、ニエンテとトーキョーバイクでは例年と比べて何か大きな違いはあったのだろうか。
子ども用の自転車が品薄に
「自転車は、ふらっと店に立ち寄って、パッと買うようなものではありません。自転車が欲しいと思った時に『そういえば、あそこに自転車屋があったな』と思い出して買いに来る人が多いので、実は1年目はなかなか売れないんです。だから例年と比較するというのは難しいのですが、コロナウイルスの流行以降、電車に乗りたくないから自転車を買いに来たという人は増えましたね。僕自身も駒込から豪徳寺まで自転車で通勤しているんですが、非常事態宣言がでたあたりから街中を走る自転車も増えたように思います」
また、自転車の在庫については「幼稚園なども休園になっていたので、この時期に練習をしようと思った人が多かったのか、子ども用の自転車はとても需要があり現在欠品中で、夏くらいまではもう予約でいっぱいです。ただ、『tokyobike』は台湾の工場で作られているものが多く、工場自体は閉鎖にならなかったので、大人用の自転車はやや品薄ではありますが、倉庫には在庫があります。今は店頭ですぐ買って帰れるものもありますし、そのほかのものでも5日から1週間程度で納車しているような状況です」と話す。
同じトーキョーバイクでも、ロサンゼルスにある店舗はかなりの品薄状態で、工場からの在庫だけでは足りず、日本にある在庫も一部ロサンゼルスに回したそう。しかし、幸いなことに日本ではまだ好きなモデルを選ぶ余裕がある。しかも、ニエンテとトーキョーバイクでは、5,000円で自転車を1週間レンタルできる『一週間おためしレンタル』というサービスも行っているので、「tokyobikeの乗り心地はどうか」「本当に自転車での通勤ができるのか」といった、自転車のある生活を体験をしてから購入を決めることもできるのだ。
レンタルできる自転車も、あらかじめレンタル用として数台用意されているわけではなく、自分が購入を検討しているモデルを借りられるのがうれしいところ。レンタル終了時にそのまま購入すれば、レンタル料金として支払った5,000円もキャッシュバックされるという、なんとも購入者に寄り添ったサービスだ。
コロナ禍の営業で気付いたこと
また、ニエンテとトーキョーバイクは現在、予約制で入店できる人数を限定しながら営業をしている。もともとは、新型コロナウイルスの感染リスクを抑えるためにとった策であったが、そこから得た気付きもあったという。
「予約制にすることで丁寧な接客ができるようになったんですよね。今までは、混んでいるからと帰ってしまう人がいたり、2、3人同時に接客するとどうしても商品の良さを伝えきれないこともありました。専門性が必要な商品は、お客様の要望にあった提案が必要だと思うので、これを機に今後も予約制がいいかな……なんて思っています」
自転車での移動には興味を持ちつつも、なかなか購入までには至れていないという人も多いだろう。そういう人にとって「自分に合ったモデルは何か」といった漠然とした質問から、カスタムなどの細かい部分までをじっくりと自転車のプロに相談できる予約制での接客は、後悔のない、理想の自転車を手に入れるために必要なことかもしれない。
自身も自転車で通勤している見城は「自転車は単なる移動の手段だけでなく、エクササイズにもなります。また、走るのに気持ちがいい小道を見つけたり、季節を肌で感じたりできるのも電車やバス通勤では得られないものですね。あとは、自転車をこいでいると頭がすっきりしてきて、アイデアが浮かんできたりもします」と、自転車通勤の魅力を語る。
新型コロナウイルスの流行で見直された自転車のある生活。密集空間を避けるという理由以外にも、我々の生活に根付く理由はありそうだ。
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