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「閉店した喫茶店の家具の販売を行うショップです」。Twitterを眺めていると、タイムラインにこんな言葉が流れてきた。開いてみると、村田商會(むらたしょうかい)というアカウント。
閉店した喫茶店やキャバレーなど、昭和レトロを感じる店の家具や喫茶道具を販売するネットショップで、今年1月に西荻窪に実店舗を構えたということである。
「店では喫茶道具や家具が買えて、喫茶メニューも味わえるらしい!」という前情報を持って、オーナーの村田龍一を訪ねた。
西荻窪駅から徒歩5分ほどの場所に村田商會はある。喫茶店ポット(POT)があった場所で、向かいには喫茶店のどんぐり舎が。
オーナーの村田。大の喫茶店好きで、これまで全国1000店以上に足を運んだ強者だ。
村田が西荻窪に店を開いたのは、同所で45年間営業していた喫茶店ポットが閉店した際に、家具を引き取りに行ったことがきっかけ。最終的には店自体も引き取り、自ら喫茶店を開くことにしたのだ。
ポットの面影が残る店内では、喫茶店で使われていた家具やカトラリー類などの販売のほか、喫茶店としての機能もしている。コーヒーはもちろん、ナポリタンやクリームソーダ、トーストのほか、瓶ビールなどアルコール類なども楽しめる。
王道メニューを堪能しよう……
コーヒーは熱いうちに
村田は、この商売をオンラインからスタートさせた。2015年のことだ。「20歳の頃から喫茶店巡りをするようになって、いろいろな店に行っていました。ある日、なじみの喫茶店が閉店することを聞いて、店に行ったんです。そこのオーナーが、家具はすべて捨ててしまうという話をしていて。ふと、寂しさが込み上げてきたんです。この時、家具を買い取ることにしました。これが大きなきっかけでしたね」と話す。
これ以降、サラリーマンを辞め、自分の足で閉店する店を巡り、昭和レトロを感じさせる家具の販売に力を注いできた。
公式サイトを見てみると、ただのアンティークショップや中古販売ショップとはひと味違うことが分かる。カテゴリーという項目をクリックすると、「椅子」や「テーブル」ではなく、銀座凮月堂、吉祥寺の喫茶店 シェモア、蒲田 グランドキャバレー レディタウンなど、店名が表示されるのだ。
公式サイトより。このレディタウンのソファーは、吉原のカストリ書房へ引き取られていった
店名をカテゴライズしていることについて「モノとして売るのではなく、情報を付加することによって思い入れを持って買ってもらいたいと考えています。実際、その店と縁がある人も購入してくれていますね」と村田。
喫茶店の運営について村田は、「家具の販売と平行してやっているので、大変な部分もありますね。もともと喫茶店のメニューが好きで、
1970年代から80年代に起こった喫茶店ブーム。現在、店主の高齢化が進み、惜しまれながら閉店していく店がたくさんある。もう二度と訪れることができないという悲しさもあるが、村田の取り組みによって、愛すべき喫茶の思い出を自宅で、新たな形で蘇らせるという選択が生まれたのではないだろうか。