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400本近い映画のサウンドトラックを手がけてきたイタリアのベテラン作曲家、エンニオ・モリコーネが91歳で死去した。彼の名を最初に世に知らしめたのは、セルジオ・レオーネの『続・夕陽のガンマン』などのマカロニ・ウエスタン映画のための音楽だった。
しかし、ほかにも信じられないほど多様な音楽を生み出し、ジュゼッペ・トルナトーレ、ブライアン・デ・パルマ、ダリオ・アルジェント、クエンティン・タランティーノなどの名監督とも協働。各作品で素晴らしい創造性を発揮してきた。アカデミー賞では5回ノミネートされ、2016年には映画『ヘイトフル・エイト』でアカデミー作曲賞を受賞している。
今世紀に入ってから、モリコーネは国際的な舞台で自身のスコアを積極的に演奏してきた。2006年夏に行われたロンドンのハマースミス・アポロ公演もその一つ。公演前に行われた、彼へのインタビューを改めて再録する。
ーあなたの曲が使われている映画を観ていない人でも、今回の公演を楽しめる要素はありますか?
観客は映画を知らない方がよりいいのかもしれない。聴いた人がその人なりに音楽を楽しめるわけだから。しかし、それには、音楽がそれ自体で成立していなければいけないという側面もある。
ー最近演奏している音楽の多くは、1960年代後半から1970年代前半のものです。その頃は年間15~20本分の映画の楽曲を書いていたそうですね。その並外れた創造性に驚きます。
クラシックの偉大な作曲家たちと比較すると、私はまだそんなに書いていない。ロッシーニは「セビリアの理髪師」を15日で書いている。それに比べ、私の努力は微々たるものにしか見えない。実は当時、仕事の依頼を何度も断っていた。同じような映画ばかりやっていたら、死にたくなるかもしれないと思ったから。
ー技術的な達成感と作品への感情的な反応、どちらが大事ですか?
それはイコールだろう。初期衝動は必要だが、その先に進むための技術力も必要だ。突然プロジェクトが舞い込んできた場合、技術はあなた自身を救うのに役立つ。別の機会により多くの時間を使えるかもしれないとか、自分の感情的な反応が仕事を後押するものだと信じることは、あまりよくない。感情が自分のプロ意識より勝ってしまうと、不確実な結果につながることがある。
ー監督との理想的なコラボレーションとは、どのようなものだと思いますか?
大事なのは相互の信頼。接点を見つけやすくなるからだ。監督が作曲家を信じていれば、統合点をより簡単に見つけることができる。
ー映画監督のなかには、より密接になってくる人もいますか?
ほとんどがそう。それが、不自由なときもあれば、良いときもある。ただし、良い時間だったとしても、結果が良くなるとは限らない。
ー音楽的な感性を持っていると思う映画監督はいますか?
ジュゼッペ・トルナトーレはそうで、彼は非常に音楽的な人だ。音楽についての理解を格段に深めたと言える。彼は、自身の心を動かす和音や構成に真の反応を示すことができる。
ーセルジオ・レオーネは、あなたに映画音楽の既成概念の枠を超えることを求めたのでしょうか?
言わなければならないのは、彼は私に何も指示をしてないということ。なぜなら彼は、私に何か言うほどの音楽的な想像力を持っていなかった。ただ、彼は自分の作品に何が合っているのかを理解するという、監督としての基本的な資質は持っていた。私たちはとてもうまくいったのは、私の音楽が自分に作品に合うと彼がよく理解していたからだろう。
ー最近は映画音楽の仕事を縮小してライブ活動をされていますが、オーディエンスから直接評価を受ける方が満足度が高いのでしょうか?
ただ好きなだけ。自分がしたことに対する人の満足感を感じたり、理解したりするのが好きなんだ。
ー満たされない野望は?
ある。作曲することだ。
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