[title]
ロンドンでは、キツネを見かけることは珍しくない。夜の金切り声に目を覚まされたり、ほろ酔いで歩いて帰る途中、生け垣からシュッと飛び出してくる「オレンジ色の生き物」に驚かされるのは、まさにこの街の通過儀礼なのだ。セントポール大聖堂の聖歌隊席での目撃談もある。しかしロンドンの通りには、なぜこれほど多くのキツネがうろついているのだろうか。
ロンドンとキツネの関わりについて解説してくれたのは、野生動物保護団体、ロンドン・ワイルドライフ・トラストの保護担当ディレクターであるマシュー・フリス。
「アカギツネが街に現れ始めたのは、第一次世界大戦後。その頃は交通システムが発展した時期で、人々はある場所で働き、別の場所に住むことができるようになりました。次第に、かつて田舎だったエリアに住宅が建てられ、郊外ができたのです。キツネたちはそうした環境にすぐに順応。新しい家の比較的大きな庭で、食べ物や住処を確保するようになりました」
ロンドン・ワイルドライフ・トラストは、現在ロンドンには約1万匹のキツネが生息していると推測。周辺の田園地帯よりもキツネがよく見られる地域もあるという。人間との共存に慣れながら、キツネは街の中心部まで生息地を拡大。フリスは「都会で暮らすキツネの数は、過去30年間で大幅に増加したと考えられています。ロンドンでキツネが生息していない地域は、今ではほとんどありません」と教えてくれた。
しかし、都会生活にリスクがないわけではない。ロンドンで暮らすキツネの60%が毎年交通事故死している。それにもかかわらず、キツネの数は一定のまま。この街の生活にはそれなりの利点があるからだ。フリスによると、「田舎よりも都会の方が、食料や住居を得る機会が多い」そうだ。我々の気取った仲間たちは、古くなったサワードウブレッドやビーガン風フライドチキンを狙っているのかもしれない。
関連記事