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「豊島区国際アート・カルチャー都市構想」を策定し、都市開発を進める豊島区。その中心地である池袋は、東口に超高層オフィスを含む3つの建物から成るハレザ池袋がオープンするなど、アート・カルチャー都市として目を見張る発展を遂げている。
ハレザ池袋に続いて11月16日にオープンしたのが、池袋西口公園を大規模改修した劇場公園だ。常設ステージと仮設ステージの組み合わせによってフルオーケストラコンサートにも対応した舞台は、大型ビジョンや音響設備も備え、各種ライブビューイング上映も予定されている。
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11月23日にはこけら落とし公演『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~-東アジア文化都市2019豊島バージョン-』が上演された。そして11月25日には、公園の上空に浮かぶデジタルアート連動モニュメント「グローバルリング」の完成披露イベントが開催された。
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横幅11メートルの大型ビジョンと8チャンネルのサウンドシステム、リングに敷設されたLEDライト、広場中央の噴水から成るグローバルリング。クリエーティブスタジオのJKD Collectiveが手がけた時報と連動したオーディオビジュアルコンテンツでは、時間帯と天気、気温、湿度などの情報をリアルタイムに解析し、音やビジュアルの演出が変化する。音楽とサウンドデザインを担当したのは、クラブミュージックから伝統音楽までを行き来する異才プロデューサーKuniyuki Takhashiだ。
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また、大型ビジョンではデジタルアート『GLOBAL MUSEUM』を上映。作品の提案はカナダ モントリオール発の電子音楽・オーディオビジュアルアートのフェスティバル『MUTEK.JP』が担当し、季節ごとに異なる作品を上映する。現在は、テイラー・デュプリーらとの共演でも知られるサウンドデザイナーのコリー・フラーと、映像作家のSynichi Yamamotoによる共作『#001 “Colure”』が上映されている。
このように、公営の施設としては異例ともいえる尖ったコンセプトのグローバルリングだけに、完成披露イベントも、まるで新宿ピットインか六本木スーパーデラックスか、という攻めた内容となった。
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点灯式の後に行われた記念ライブで披露されたのは、和太鼓奏者の大多和正樹とディジュリドゥをはじめさまざまな楽器を操る名手GOROによるセッションと、「シンセ番長」の異名をとるサウンドデザイナー齋藤久師によるアナログシンセを駆使したライブ、そして『あまちゃん』の劇伴でも知られる作曲家でジャズギタリストの大友良英と「声のアーティスト」山崎阿弥によるデュオの演奏だ。
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事前打ち合わせなしのフリーセッションで素晴らしい演奏を披露したGORO(左)と大多和正樹(右)
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この日一番の爆音で荒々しいシンセサウンドを鳴らした齋藤久師。会場のクリアな音響との相性も抜群だった
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鳴き声かうめき声か、という多彩な声を操る山崎阿弥と、ギターで激しいノイズと繊細なアルペジオを弾き分ける大友良英。あうんの呼吸のセッションの後、ラストの1曲として演奏されたのは加川良の名曲『教訓Ⅰ』だった
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駅前広場に大音響で響き渡る電子音やノイズに、道行く人は思わず足を止め、何事かと見入る人も少なくなかった。保守的なプログラムが選ばれがちなこうした舞台で、商業的なフィールドの外で活躍する優れたアーティストたちを取り上げ、日本人ならではの表現が披露されたことに、「アート・カルチャー都市」としての発展を目指す豊島区の本気を感じる。気合の入ったスタートを切ったグローバルリングの今後に期待したい。