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強制退去を迫られる京大吉田寮。その実態を目にするには

Mari Hiratsuka
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Mari Hiratsuka
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テキスト:清水康介

日本最古の学生寮、京都大学吉田寮。入寮する学生の選定などを含む一切の運営が、寮生の自治によって取り仕切られている同寮は、フランク・ザッパ(Frank Zappa)やトム・ウェイツ(Tom Waits)の公演が行われたこともある西部講堂などとともに、同大学が掲げる「自由の学風」を象徴する建物だ。「いかなるときでもメンツの揃う麻雀部屋がある」「畳をはがして稲作を始めた」など、筆者が在学していた10年ほど前には、そんな噂もまことしやかにささやかれていた。

吉田寮の寮生たちに対して、大学側が退去を要求しているということは、ニュースなどでも取り上げられ、よく知られるところとなった。本件に関して、「全国的に広がる大学改革の一端」「全共闘の時代から連綿と続く過激派の温床」「建物の老朽化」といった言葉で理解した気になるのは、少し待ってほしい。

自治会が大学との話し合いを求めたことに対し、警察を呼んで対応するのが大学改革なのだろうか。自治活動にそこまで積極的ではない寮生(月2,500円という家賃は多くの苦学生にとって魅力的だ)までもが反対の声を上げているのは、なぜだろうか。学生に退去を求める理由に建物の老朽化」を挙げながら、2015年に建設されたばかりの西寮からも退去を迫っているというのも大きな矛盾だ。

©Katsumi HIRABAYASHI

上記のような紋切り型のフレーズは、そこに暮らす個々の寮生の生活への想像力を欠いている点で、先述の他愛ない噂と同様、たいした意味を持たないのではないだろうか。同大学で学ぶ学生たちですら、キャッチーな流言飛語をエンターテインメントとして消費するに留まり、実際の寮での日常を目にしていないことがしばしばだ(もちろん、人間の生活の場である寮を観光地のごとく、物見遊山で訪れることに対する遠慮もそこにはある)。

同大学が示した退去の期限、2018年9月30日を過ぎてもなお、寮生たちの生活は続いている。本件の落ち着く先はまだ不明だが、寮の存続を望む学生たちは、特設サイト『吉田寮を守りたい。』をはじめ、積極的に情報発信を始めている。『change.org』上では、署名活動も継続中だ。

また、寮生発信ではないものとしては、ドキュメンタリー映画が作品完成のための支援を募って、クラウドファンディングを行っている。監督は、映画『菊とギロチン』(2018年 瀬々敬久監督作品)のプロデューサーも務めた藤川佳三(ふじかわ・けいぞう)。

11月22日(木)〜25日(日)には学祭『11月祭(通称 NF)』が開催され、吉田寮食堂では23日(金)の一夜限りで、伝説的なパーティー『京大テクノ部』も復活する。これらの機会を通して吉田寮の実態について、少しでも知ってもらえたら幸甚だ。

ドキュメンタリー映画『自治と青春-京都大学吉田寮(仮)』のクラウドファンディングは、2019年2月12日(火)まで。リターンには、「映画の試写会へのご招待」「監督による吉田寮見学会」「DVDプレゼント」などを用意している。2020年劇場公開予定。

クラウドファンディングについての詳しい情報はこちら

写真提供:映画『自治と青春-京都大学吉田寮(仮)』より

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