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ヨコハマトリエンナーレ2020組織委員会は2020年6月22日に記者会見を開き、横浜美術館館長の蔵屋美香が見どころとなる作品を紹介した。7回目となる今回は新型コロナウイルス感染症の流行のため、会期をずらして7月17日(金)〜10月11日(日)に開催を予定している。
タイトルは「AFTERGLOWー光の破片をつかまえる」。アーティスティック・ディレクターには、初の外国人となるインドの3人組アーティスト集団、ラクス・メディア・コレクティヴ(Raqs Media Collective)を迎える。タイトルの「AFTERGLOW」は、ビッグバン後の宇宙に発せられて今に至るまで降り注ぐ光、時空を超えて広がる光のイメージを指す。
会見では、五つのソース(考えの源)と呼ばれるキーワード、「独学」「発光」「友情」「ケア」「毒」が紹介された。従来のように一つのテーマを決めてアーティストが作品を制作するのではなく、アーティストと観客がこのソースを共有して考えながら展覧会を作っていこうという点が特徴だ。ラクスは身体や思考は制止するのではなく、自由に動かす中で初めて自由な発想が生まれてくると考えているため、このような流動的な方針を採用したという。
作品紹介では上記のソースのうち、特に「毒」との関連が強調された。「世界の中にも人の心の中にも、嫌なもの、毒は否応なく存在する。それを排除せずに共存し、それと付き合う中でいかに自分を輝かせるかを考えるためのもので、直接の着想源は、太陽光に含まれる放射線から身を守るためにサンゴが美しい殻を発達させることから得たのだという。
「この「毒」は去年の11月に発表されたが、現在の私たちが直面している新型コロナウイルス感染症という毒と付き合いながら生きる中で、どうやって自分を輝かせるかといった課題のようにも聞こえてくる。アーティストは時に未来を予見してしまうようなテーマを引き当てることがある」と蔵屋は語る。
紹介された作品の中でも、特に知っておくべきは、インゲラ・イルマン『ジャイアント・ホグウィード』とエヴァ・ファブレガス『ポンピング』だろう。
イルマンの作品は、光毒性を持った美しい花を咲かせる植物ジャイアント・ホグウィードを巨大化させた造形を布などで制作。大きな書屋物の間を歩きながら光や毒について、そして毒が実は美しいということを考えてもらいたいという。
またファブレガスは鑑賞者の身体を包み込むようなインスタレーションを通して、人間の身体や欲望、情動が産業デザインからどのような影響を受けるのかを探究している。この作品では、シリコンなどの柔らかな素材をもとに、健康器具などの形を着想源としている。ファブレガスは、ここで健康器具のように私たちが気持ち良く感じる形状を社会が受け取り、産業システムに組み込まれることについて考えているという。
ちなみに、ラクスはファブレガスの作品の形状から人体の腸を連想した。ソースの毒との共存という考えを踏まえるならば、腸は、臓器という意味では閉じられた環境だが、無数の細菌のすみかである点ではほかの生物に開かれており、それらと共存する場所でもある。このような自由な連想や解釈を広げていくことが、鑑賞者にも期待されているのだ。
アーティストの来場は、国内外の状況を見ながら決まるため、現時点では未定。コロナウイルスの感染再拡大に備えてオンラインコンテンツを作る試みもあるという。
会場は横浜美術館とプロット48、チケットは日時指定の予約制、公式サイトで販売を開始中だ。
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