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2020年6月、中目黒駅から徒歩数分の場所に中目黒ふらっと公民館がオープンした。同所は、中目黒銀座商店街の中ほどの、人が一人通るのがやっとの細い路地の奥にある。2階建ての戸建てで2階は美容室。商店街に面した1階の店舗は沖縄料理店だ。
本当にここでいいのだろうかと少し戸惑うが、いや看板も出ているしと勇気をもって歩いていくと、古民家風の建物がたたずんでいる。「なんでここにしたの?とよく聞かれます。隠れている場所が好きなんです(笑)」と、代表の登坂麻美は笑顔で話す。もともとは完全にスケルトンだったという建物を、温かみが感じられるように古民家風にリノベーションしたという。
「公民館というものがなくなっている時代ですが、名前の通りふらっと入れるコミュニティースぺ―スを作りたかったんです。子どもも入ることができ、年齢を問わず使ってもらえる場所になればと思っています」(登坂)
収容人数は椅子の並べ方にもよるが、10~15人くらいだろうか。壁には、プロジェクターで投影も可能。木目調のしつらえの中の障子も、得も言われぬ存在感を放っている。ワークショップや各種教室の開催、テレワークスペースとしての活用はもちろん、「キッチンのもあり、営業許可もとっているので飲食イベントも可能です」と、曜日や時間を限定した飲食店の営業もできる。
時間や場所に縛られることなく活動を展開したい経営者や各種事業オーナー、趣味を生かした情報発信やコミュニティー作りをしたい人にとっても利用価値がありそうだ。
テーブルを動かすこともできるし、スタッフ一人でも回すことができる広さもいい。照明の調節もできる。料金はホームページに明確に表記してあり、長期利用や、週1回、月10回利用などの固定利用の場合はよりリーズナブルになる。
すでにいくつかのプロジェクトや店舗が稼働しており、取材時には、中目黒のかき氷専門店ナナシノ氷菓店が営業していた。同店は、「記憶に残る最初のひと口」をコンセプトにしたかき氷店。店主の藤田かほりは、「故郷の北海道で店を開くつもりだったのですが、コロナで戻るのが難しくなってしまい、間借りできる場所を探していた時にこのスペースの存在を知りました」と語る。
シロップとクリームは全て手作り。フルーツや野菜、ナッツなど素材と掛け合わせて作っているそうだ。北海道産のてんさい糖を使って作る
シロップとクリームで2、3層の構造になったかき氷は、まるでケーキのような可憐さだ。食べ進めるごとに新たな表情を見せる。ふわふわの氷は、48時間以上かけてゆっくりと凍らせた純氷を使用している。
一番人気は『ピスタチオアングレーズ』(1,350円)。イタリア・ブロンテ産のピスタチオの濃厚な風味が氷と合わさり口内でとろける。アマレットで香り付けしたピスタチオシロップに、自家製の蜂蜜アングレーズシロップをしのばせた。いちばん下にはホワイトチョコレートのズコット(ドーム状のスポンジの中に生クリームが詰まった、イタリア、トスカーナ地方の伝統菓子)を敷いている。花をイメージしたというクリームもかわいらしい。
「おでん屋さんやお花屋さんも入っています。カラーコーディネートの教室もスタートする予定です」と語る登坂自身、池尻大橋のレモンサワーの店イザックの経営者でもある。「ナナシノ氷菓店とイザックでコラボしようとレモンサワーとかき氷を合わせてみたのですが、これは酔いますね(笑)。冷たくて、おいしくてどんどん飲んでしまうんです」と登坂。中目黒の路地裏の「公民館」で新たなケミストリーが発生しそうだ。
個展を開きたいという人や、一日店長をやってみたいなど、何かやりたいことがあるなら選択肢に入れてみてはいかがだろう。「公民館」から発信されるさまざまなエネルギーを体感するだけで楽しめるはず。
テキスト:長谷川あや
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