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小田急線の世田谷代田駅から徒歩1分、下北沢駅からも徒歩圏内という立地に、温泉旅館由縁別邸 代田(ゆえん べってい だいた)がオープン。由縁別邸は、歴史ある日本家屋や緑が残る穏やかな環境にたたずむ客室と、箱根の温泉が楽しめる露天風呂付き大浴場、割烹(かっぽう)、茶寮、スパから成る温泉旅館だ。
由縁は、国内外で14施設(2020年9月現在)の宿泊施設を企画、設計、運営するUDSが手がける温泉旅館ブランド。旅館の本質的な要素を現在のニーズや環境に合わせて編集して提供する「ONSEN RYOKAN 由縁」を、新宿と札幌で展開している。
今回は、これまでのビルタイプと異なる落ち着いた立地の低層施設で、日本旅館としての上質な空間やサービスによりこだわった施設を掲げ「別邸」と名付けた。地域住民の憩いの場となるべく、日帰り温浴と飲食のみのセットプランも用意(2,700円から)した。
デザインのコンセプトは、「まちに昔からありまちの景色の一つになっている屋敷の佇まい」。共用部には築100年以上の歴史ある世田谷のかやぶき屋敷より譲り受けた建具や景石などを取り入れているなど、土地に由縁のある素材を組み入れたデザインを踏襲している。
延床面積は約1999平方メートル。3階建ての低層施設に客室数は35。それぞれの客室は決して広くないが、機能性、居住性を追求。日本らしい空間をモダンに表現することで「現代の旅館」デザインに落とし込んだ。土間で靴を脱いで上がった先には板間と畳間が広がり、板間部分は、独特の削り跡を残す名栗(なぐり)仕上げにするなど、手足に触れた時の心地よさにこだわった。
大浴場の露天風呂には、箱根の小田急 山のホテルの自家源泉「芦ノ湖温泉 つつじの湯」の源泉を使用。富士山麓の湧水池、忍野八海で録音した水の音を流し、リラックスできる空間を演出する。サウナにもこだわった。女湯のサウナはアーティストの和泉侃が手がけた同館オリジナルのアロマをたいたミストサウナ、男湯は一般的な乾式サウナを配した。御影石をくり抜いたデザインの、男湯の水風呂の浴槽も印象的だ。
飲食施設は代田エリアで晩年を過ごしたといわれる歌人、斎藤茂吉の料理歌集『つきかげ』から命名した割烹 月かげと茶寮 月かげの二つがある。
茶寮 月かげでは、かつてこの地が茶畑だったことを背景に、日本茶専門店のしもきた茶苑大山がセレクトした茶を、「おいしく淹(い)れること」にこだわって現代作家と開発したオリジナルの茶器で用意。
2021年春には、アロマトリートメントを実施するスパと、同館最大の客室となる離れが開業する予定だ。
長距離移動を伴わずに気軽に温泉旅行気分を味わいたいとき、つかの間、都会の喧騒(けんそう)から逃避行を図り心身ともにリラックスしたいとき、または友人や親戚が上京した際の宿泊施設としてなど、さまざまなニーズに応えてくれる温泉宿が誕生した。
テキスト:長谷川あや
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