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2020年11月9日、『第12回渋谷芸術祭2020~SHIBUYA ART SCRAMBLE~』が開幕した。同芸術祭は渋谷を作ってきた渋谷カルチャーを「芸術的現象」として捉え、渋谷らしさを未来につないでいく芸術祭を目指すもの。
渋谷各所でイベントが開催され、それらは「01 都市と人がつながる」「02 過去と今がつながる」「03 文化と未来がつながる」「04 都市と都市がつながる」「05 都市と移動がつながる」と連携コンテンツから成る。
開幕を記念して、9日17時からはミヤシタパーク屋上にある渋谷区立宮下公園サンドコート内にてオープニングセレモニーが開催された。参加したのは、渋谷区長の長谷部健、NAKED, INC.代表、村松亮太郎、渋谷芸術祭実行委員長小林幹育、渋谷区観光協会理事である金山淳吾。
同セレモニーでは、渋谷区の子どもたちも参加して、「ブレス・ブレス・プロジェクト(Breath / Bless Project)」のファーストアクションが行われた。
このプロジェクトは村松亮太郎とNAKEDが手がけ、タンポポに息を吹きかけると綿毛が舞うインタラクティブ作品『ダンデライオン(Dandelion)』を世界各地に設置、世界中の人々の平和への祈りをリアルタイムでつなぐことを目指す。
サンド中央にはダンデライオンが据えられ、地面にはプロジェクターで祈りや思いをイメージした花の咲き乱れる草原が投影されている。本来はこの綿毛に息を吹きかけると、タンポポの種子が飛んでいく趣向であったが、コロナ禍のため息を直接吹きかけるのではなく、同プロジェクトの公式ウェブサイトから取得できるQRコードをかざすと種子が飛ぶ仕様に変更された。
世界中のダンデライオンに息を吹きかけることで、さまざまな街から発せられる「吐息(Breath)」が平和を願う「祈り(bless)」の種となって世界中で花を咲かせる。このようにリアルとバーチャルがシンクロし、 人々が参加するネットワークそのものを国境を越えるアートとして成長させることで、コロナ禍で断絶が進んでいる世界をつなげたいという。
宮下公園を展示場所とした理由にも、国や人種や思想など、あらゆる境界を越えた人々が集う渋谷を起点として、さまざまな人々の祈りや思いをタンポポの綿毛に乗せて世界中に届けたいという思いが込められている。
オープニングアクトでは、参加者の子どもがQRコードをかざすと、地面の映像にタンポポの花と綿毛が一斉に咲き乱れ、その頭状花が分解して綿毛に変化、やがてどこかへ飛んでいく映像が広がった。
ブレス・ブレス・プロジェクト(Breath / Bless Project)の公式ウェブサイトからもプロジェクト参加が可能で、東京、ベネチア、ケープタウンの各都市にオンラインで種子を届ける体験ができる。
また、同日はミヤシタパークの向かい側に位置する渋谷キャストでも、トラックで移動するアートプロジェクト『3D Phantom モビリティアートトラック』も披露された。
このプロジェクトは、LED光源がライン状に付いたブレードを高速回転させ、光の残像によって映像を映し出す3Dホログラムサイネージである「3D Phantom®」をスケルトントラックに設置し、渋谷という都市空間そのものを作品として「場所や時間によって、見たり、聞いたりするものに対する感じ方が異なる斬新な空間体験」を提供する。
トラック内のスケルトンは三層になっており、奥行きある空間を演出できる上、トラックが走る場所に合わせて映し出す映像を変えることも可能だ。コロナ禍でアートをなかなか見られない人々にアートの側から体験してもらう機会を提供しようという思いから作られた 、おそらく世界初となる試みだという。
同芸術祭ではほかにも、多彩な参加者によるトークセッションや、ワークショップ形式で参加者と壁の落書きを消して、新たなアートを制作する『シブヤ・アロープロジェクト×CREAN&ARTプログラム』、1990年代の渋谷文化現象や街並みをモチーフに、アートディレクターである千原徹也とコラボレーションしたアート作品の展示なども開催。
特に『シブヤ・アロープロジェクト×CREAN&ARTプログラム』は「渋谷の抱える地域課題の一つである落書き問題を解決しつつ、SDGsの啓蒙(けいもう)につながる発信手段として活用する」点で、アートという枠組みにとどまらないアクチュアリティーあふれる試みと言えよう。
美術館で鑑賞するのとは違った多くの形でアートを楽しめる仕組みが用意されている祭典だけに、自分なりの楽しみ方を見つけやすいだろう。そこから踏み込んで、これからのアートや都市やコロナ禍の未来を考えるきっかけも生まれるかもしれない。開催は11月15日(日)まで。
『第12回渋谷芸術祭2020~SHIBUYA ART SCRAMBLE~』の詳細はこちら
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