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このホテルで見られる情景ほど、昔のニューヨークを物語るものはなかった。しかし、ラグジャリーには、莫大(ばくだい)な賃貸料が付きもののようだ。マンハッタンのランドマークとして100年の歴史を持つルーズベルトホテルは、もはやドアを開けておく余裕がなくなってしまったようだ。
グランド・セントラル駅の近くにあるこのホテルの創業は1924年。その名前は、アメリカ大統領であるセオドア・ルーズベルトにちなんだものだ。壮大なロビー、大理石の床、2階建ての天井、人目を引くシャンデリアなど、この歴史的な場所にはクラシックホテルにある全ての要素がそろっている。
禁酒法時代から第二次世界大戦までニューヨークの歴史を生き抜いてきたが、新型コロナウイルスの影響による経営悪化のため、2021年10月31日(土)に営業終了することになった。
CNNに対して同ホテルは「現在の未曽有の状況と、感染の不確実な影響が続いていることを鑑み、オーナーはルーズベルトホテルを閉鎖するという難しい決定を下しました。関係者が通知を受けたのは10月中旬。ニューヨークのほとんどのホテルと同様に需要が非常に低く、そのため、年末を待たずに閉鎖に至りました。今のところ、閉鎖以降の予定は決まっていません」と述べている。
ルーズベルトホテルの現オーナーはパキスタン国際航空。このホテルは、アメリカの歴史的な瞬間の舞台となってきた。1948年の大統領選に出馬したニューヨーク州知事のトーマス・デューイの選挙本部があり、対立候補のハリー・トルーマンを破ったと誤って宣言したのもこの場所だった。また、大みそかに『蛍の光』を歌うニューヨークの伝統も、このホテルが発祥の地。1929年にガイ・ロンバード楽団がラジオ放送向けの演奏を行ったのが始まりだった。
このホテルを直接訪問したことがないならば、『メイド・イン・マンハッタン 』『マルコムX』『ウォール・ストリート』『アイリッシュマン』『マッドメン』などの映画やテレビ作品を見てみよう。有名なファサードを垣間見ることができる。
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