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西麻布にあるレストラン、エネコ東京に初夏の新メニューが登場している。エネコ東京とは、スペイン バスク地方のビルバオにある三つ星レストラン、アスルメンディでシェフを務める、エネコ・アチャ・アスルメンディが監修する店。ランチ、ディナーともにコース料理のみの用意で、メニューは、季節ごとに少しずつ内容を変えているのだそうだ。ちなみに、エネコ東京は2017年9月にオープンした店なので、夏を迎えるのは今年が初となる。
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初めてエネコ東京を訪れた人は、独特な食事の提供スタイルに少し驚くかもしれない。なぜならば、店に入ってすぐに案内されるのが、レストランの席ではないからだ。まずは、美しい盆栽が並んだ部屋で、一口サイズの料理を食前酒とともに味わうのがエネコ流。その後、開放的なテラスに移動して数種の料理を味わったあと、やっとレストランの席に着席する(テラスの利用はディナー時のみ)。
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日本人の目から見ると斬新に感じられるが、エネコ東京がこういったスタイルを取り入れたのは、ごく自然なことだったのかもしれない。というのも、スペインのレストランでは、席に着いて食事を始める前に、ほっと一息つける時間を設けることが多いというからだ。エネコ東京では、この時間を「エネコ流のもてなし」とし、彼らならではの演出で我々を楽しませてくれている。筆者も、実際にこのスタイルで食事を体験してみたが、場所を変えることで同行者との会話も自然と増え、予想以上にリラックスできたことに驚いた。
着席してからは、前菜、魚料理、肉料理、デザートなど、美しく盛られた料理が次から次へと運ばれてくる。一番印象的だったのは、『オマール海老 シェリー風味コンソメ 卵の天ぷら』。プリプリとした食感のオマール海老はもちろんのこと、口に入れた瞬間にプチっとはじける卵の天ぷらが何よりも衝撃的だった。天ぷらにはベシャメルソースが用いられており、味わいは濃厚だ。そのほか、『ドノスティア風のカニ』や『レモンのボンボン』などが、初夏のメニューとして新登場した。
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もう一つ、初夏のメニューとして登場したものではないが、前菜の『有機卵とトリュフ』にも驚かされた。この料理は、注射器のような道具を使い、卵黄の中にトリュフの香りのエキスを注入するという、ユニークな一品。この作業は目の前で行われたが、卵黄を1つも割ることなく、器用にエキスを注入していく技術は見事だった。食べるときは、大きな口を開けて一口で。口の中で温かい卵とトリュフの風味が溶け合い、思わず笑みがこぼれるだろう。
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場所を変えながら食事を楽しむというスタイルや、新しい発想で作られた料理など、エネコ東京には胸躍る瞬間が随所に散りばめられている。三つ星レストランのシェフが監修するハイクオリティな料理を味わえることも含め、このレストランで過ごす時間は特別なものだ。初夏のメニューの提供は、9月までを予定。美食体験をするべく、ぜひ足を運んでみてほしい。