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ハリウッド&ハイランド(Hollywood & Highland)は、アカデミー賞の本拠地であり、世界で最も知られている映画館の隣に位置する複合商業施設。この場所が名前も新たにし、大きく変わろうとしている。
1億ドル(約105億円)をかけた改装後に誕生するのは、オベーション・ハリウッド(Ovation Hollywood)。ショッピングセンターであることは変わらないが、「テナントや手に入るアイテムは刷新」される。また計画では、敷地面積の約3分の1をオフィス(今は5%に過ぎない)に転換することも打ち出している。対象は現在いくつかのレストランとジャパン・ハウスが入っている最上階とその下のフロアで、改修後は15万平方フィート(約4200坪)のオフィススペースが確保される見込みだ。
2019年にハリウッド&ハイランドを買収したガウ・キャピタルUSAとDJMは、2020年中に改修工事を始めて、2021年後半に終える予定。改修デザインを担当する建築事務所のジェンスラー(Gensler)は、2020年8月6日に完成予想図と時代遅れの建築物、平凡なアイデンティティー、分かりにくいレイアウトを刷新するためのデザインガイドを公表した。
そのなかで見られた最も顕著な変更点は、象が乗った柱がなくなり、ハリウッドの文字をフレーミングしているアーチがアールデコ調デザインを取り入れ、より洗練されたものになることだ。
今ある象の柱とアーチは、いずれもD.W.グリフィスによる1916年公開の無声映画『イントレランス』の巨大なバビロンのセット(実際にセットが置かれたのは少し東にいったヴィスタ・シアターの辺り)へのオマージュ。この場所を訪れた人のほとんどがそのことを忘れていたとは思うが、そのオマージュに代わり、新しいアーチの内側にはアーティストのジェフ・マクフェトリッジが描く壁画が並ぶ。モチーフは、カメラマンたちと拍手喝采している人々だという。デザインガイドによると「ハリウッドの真髄」を表すものになるようだ。
同じセントラルコートについてもう一つ。完成予想図では階段やエスカレーターで起きる混乱が解消されているようだが、このデザインがフロアからフロアへの移動を容易にするかどうかはクリアではない。確かに見た目は良くなってるが、改修することで「混乱したレイアウト」をどのように解決するかが分からないのだ。
改修案でも、ハリウッド・ブルバード沿いの入り口は階段とエスカレーターの峡谷であることは今と同じで、さらにハイランドアベニュー側でも駐車場の入り口近くの斜めの開口部と大きな壁は改修案でも残ったまま。その一方で、老化が見られポストモダン建築的だった壁の砂色は、明るくカラフルな色へと変わる。また、南西の角にそびえ立つ広告ボードは大きな二つのボードへと整理され、ハリウッドの歴史的な看板で使われるタイポグラフィとマッチするように施設名が表示されるようになる。
ドルビー・シアターに続くトンネルにあるアカデミー賞最優秀作品賞のプレートが飾られた アワード・ウォークは、オベーション・マーケットとして飲食にフォーカスしたエリアとなる。また、チャイニーズ・シアターの裏にある細いオレンジコートには、アウトドアバーやダイニングが設置される予定だ。
ハリウッド&ハイランドがオープンしたのは2001年。先導したのか、たまたまタイミングが合ったのかは分からないが、ハリウッドが商業的に関心を集めた時期だった。しかしここ数年、この地域にエンターテインメント企業が集まり新たな開発も行われたため、ハリウッド&ハイランドでは時代遅れのデザイン、歩行者への配慮のなさ、ショップのデッドゾーンなどが目立っているだけだった。新しく誕生するオベーションがこれらの問題を解決することを願っている。
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