天保8年(1837年)に創業した天安は、江戸時代から続くつくだ煮の専門店だ。当時の装いをそのまま残した店舗はそれだけで歴史の深みを感じるたたずまいである。佃煮の種類は12種類ほどあり、いずれも米のおかずに最適なものばかりだが、おすすめは『あみ』。エビに似た小さな甲殻類で、風味が強く甘辛の味わいに箸が止まらない。
つくだ煮は江戸時代に江戸の佃島(現在の佃エリア)の漁師が、魚の獲れない時に保存の利くように工夫して、小魚をしょうゆと塩だけで煮込み、非常用備蓄食にしておいたものが始まりといわれている。タンパク質やカルシウム、鉄分が豊富に含まれている江戸のエシカルフードである。