世田谷の用賀にある和牛専門の精肉店。用賀駅から12、13分歩くと、閑静な住宅地の中に突如カフェのようなスタイリッシュな建物が現れて驚く。店内のガラスケースに牛肉のブロックがずらりと並ぶ姿は圧巻だ。
同店が取り扱うのは、牛肉、それも黒毛和牛の雌のみ。和牛といえば神戸牛が世界中の食通に知られているが、それ以外にも高品質な和牛は日本国内に無数にある。そんな知られざる各地のブランド和牛の存在を、もっと世界に向けて発信したい、との思いで証券業界出身のオーナー、上野望(うえの・のぞみ)が国内を回って優れた和牛を厳選。地方大会で優勝したチャンピオン牛などを仕入れ、部位ごとに売っている。
サーロイン、肩ロース、モモなどのほか、シャトーブリヤンやシンシンといった高級な希少部位もそろえる。肉に詳しくない人でも、同店のミートコンシェルジュが客の予算と好みの味、食べ方に合わせた適切な部位を選んでくれるので間違いがない。おすすめの『ミスジ』はサシ特有のとろけるような味わいを楽しみつつ、さっぱりして腹にもたれず、絶品。
近隣に住む外国人のほか、海外からの観光客の利用も多い。旅行客には帰国前日に滞在先のホテルに冷凍パッケージを配送する無料サービスもあり、肉製品の持ち込みが許されているシンガポールからの客には特にファンが多いそうだ(日本の農林水産省は個人消費用、1人5キロまでに限り、シンガポールへの肉の輸出を認可している)。
テキスト:浅野 陽子(フードライター)
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