20世紀に活動した革新的な画家、北川民次(1894〜1989年)の生誕130年を記念する展覧会「北川民次展―メキシコから日本へ」が「世田谷美術館」で開催される。20歳で渡米した北川は、キューバを経由してたどり着いたメキシコで新進画家・教育者として活躍。その後、メキシコで盛んだった「壁画運動」に影響を受け、メッセージ性の強い作品を生涯を通じて作り続けた。
はっきりとした輪郭線、簡略化された細部、デフォルメされた形態、そしてシンプルな構成が特徴で、社会に対する北川の鋭い視線が画面に常に注がれている。帰国後は、東京・池袋を経て愛知・瀬戸に居を構え、陶器生産の活気溢れる瀬戸の人々とその生活を終生温かく見つめ、共感を持って描いた。一方、絵画を通して社会批判をする先駆的な画家として一つの道を切り開き、安保闘争や公害問題などの多くの問題を議題とした作品制作に挑み続けた。
約30年ぶりの回顧展となる本展では、北川の油彩約60点、水彩、素描、版画など約50点に加え、1920~30年代メキシコの多様な芸術動向に関する資料や当時交流した芸術家たちの作品も展示される。北川の軌跡を多角的に紹介する本展で、彼の芸術とメッセージを再発見してみては。
※10~18時(入館は17時30分まで)/休館日は月曜(祝日の場合は翌日)/料金は1,400円、65歳以上1,200円、学生800円、小・中学生500円、未就学児無料