手がけた品々の多くが国宝や重要文化財に指定されている、総合芸術家の本阿弥光悦(ほんあみ・こうえつ)。江戸時代初期、家業だった刀剣の研磨や鑑定だけではなく、漆工、書、陶芸と、多岐にわたる造形に関わった人物だ。本展は、そんな光悦の造形に関する最新研究と、熱心な法華信徒でもあったことを照らし合わせ、幅広い活動を総合的に見通そうとするもの。
例えば、山なりに膨張したような造形の国宝「舟橋蒔絵硯箱」は、現在「光悦蒔絵」と呼ばれる作品の代表格だが、その独特の表現やモチーフの背景には、光悦がたしなんだ謡曲の文化が伺える。また、光悦の高い表現力が見て取れる表情豊かな書や、鋭く張りつめた筆致で書写された日蓮法華宗関係の書、作陶した個性的な形の茶わんや楽家との関わりなども紹介される。
ジャンルレスに活動した当時「異風者」と言われた芸術家だが、高い美意識と確かな審美眼によって生まれた優品が、現代の私たちの目にどのように映るのか、非常に興味深い展覧会となるだろう。
※会期中、一部作品の展示替えあり