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Photo: Kisa Toyoshima
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谷町六丁目でしかできない10のこと

老舗から隠れ家バーまでレトロな街のローカルスポットを巡る

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「谷六(たにろく)」の愛称で親しまれている、「谷町六丁目」。Osaka Metroの谷町線と長堀鶴見緑地線が交差し、梅田や心斎橋など都心へのアクセスも便利で住みやすく、人気の街だ。

また、由緒ある商店街も活気があり、昭和初期の家並みが残されているのも魅力。太平洋戦争による戦災を免れたことで、昔ながらの大阪風情が今も漂い、町家や長屋を再生した飲食店やショップが誕生している。

ここでは老舗から隠れ家バーまで、地元民に愛される谷六周辺のローカルスポットを紹介する。新旧の交わりの中で生まれる独特の空気感を味わいながら、レトロな街を探訪してみては。


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台風飯店

「住居と個人商店のバランスが良いエリア」こと谷町六丁目には、昨今、若者たちが集う店が増えつつある。そんなムーブメントの要ともいえる「大衆食堂スタンドそのだ」の2号店として2018年にオープンしたのが、ここ「台風飯店」だ。

「台風が通る道のりの国の料理」をテーマに、タイ、ベトナム、台湾、沖縄の料理をヒントにしたメニューを提供している。店内は、東南アジアの食堂のような雰囲気。DJでもあるオーナーが同店用にミックスした音楽が響き、壁にはメニューの短冊がずらりと並ぶ。深夜2時までにぎわっているが、ランチタイムには子ども連れも多い。

まずは名物の「バイスサワー」(528円、以下全て税込み)で乾杯だ。次は、手のひら大の台湾唐揚げ「チョキチョキチーパイ」(シングル 528円)を、ハサミでチョキチョキしよう。ざくっとした衣に4種のスパイスをまぶした濃厚な唐揚げは、梅しそ味のバイスサワーとの相性も抜群だ。バイスサワーは1人3杯までが推奨摂取量。飲み過ぎ注意である。

「モヤシソムタム」(363円)や「ラム串2本」(495円)など、次々注文しても全て1,000円以下というのが心強い。最後は「ルーローハン」(495円)や、中華麺で作ったモチモチの「パッタイ」(880円)で締めれば間違いない。

夜に輝く看板に描かれる店のロゴはイラストレーターのNONCHELEEEによるもの。マドラーやTシャツなどオリジナルアイテムが続々と誕生している。楽しい記憶と一緒に、こうしたアイテムもぜひ手に入れたい。

  • イタリア料理

島之内フジマル醸造

心斎橋駅から徒歩10分ほどの場所にある、ダイニングを併設したアーバンワイナリー。2階のダイニングフロアから見下ろせるのは、1階にあるワイン醸造所の巨大タンク。まさにその場で、発酵、熟成しているワインの息遣いを感じながら食事が楽しめる。

サーブされるグラスワインは、ヨーロッパ各国産も含め約15種類(660円から)で、そのうち約3分の1が日本ワイン。もちろん、1階の醸造所で造られた自社ワインも欠かさずラインアップされる。自社ワインはボトルでの購入も可能だ。

「日本ワインは、ブドウ栽培が難しい気候の国でチャレンジを続ける生産者のガッツと心意気が伝わるのが魅力」と語るのは、ソムリエの河端浩史。この二つは、河端が選ぶ全てのワインから雄弁に伝わってくる。

写真の「大阪千両ナスのクロスティーニ、ヤギのフロマージュブランとイチジク」などの前菜、パスタ、メインまで充実のイタリアンのアラカルトメニューは、どれもが超一流トラットリアのレベルにある。ワインのみならず、料理にも大いに期待して、島之内に向かおう。

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たこりき

大阪人が胸を張って勧められるたこ焼き専門店の一つ。大阪の食文化を守り伝える「こんぶ土居」の「天然真昆布」と「久間田商店」のかつお節、まぐろ節からだしを取り、伊勢産のタコを湯がいて使う。小麦粉、卵といった素材も全て吟味して焼き上げる「たこ焼き」は、ソースを付けなくてもうま味十分。大阪で親しまれてきた小ぶりのサイズもちょうどいい。

「たこ焼き 一人前」(14個、1,100円)は、一般的な相場からすればやや割高に感じられるかもしれない。実際、店頭にも「ちょっと高いです」という断り書きがある。「高級店を目指してるつもりは全然ないんやけど、昔ながらの当たり前のことをやろうとしたらどうしてもこの値段に」とは店主の言葉である。

たしかに、国産のタコでさえ「もはや高級食材」という今の時代。それでも、店主が子どもの頃に食べていた「当たり前のたこ焼き」を素材から追求することで、大阪人も納得のたこ焼き店として多くの人に愛されている。

なお、ナチュールワインをはじめとするドリンクメニューも充実して、たこ焼きに合わせて昼から1杯、というのもこの店では馴染みの光景。「たこやきグラタン」などのアレンジメニューと合わせれば、飲み過ぎ必至だ。

※現在、夜は別形態の営業となっている

  • 中華料理

中国食堂261

谷町の住宅街にひっそりとたたずむ中国料理店。週末のみの営業で、ディナーは予約限定(前日までに要予約)で提供している。

ランチメニューは、セットで1,600〜2,000円程度。オーガニック野菜、肉、魚を中心にした3種の選択肢のほか、一日一食限定の料理がある。驚くのは「本当に全部仕込んでいるのか?」と疑いたくなるほどの品数の豊富さだ。

取材時は「天然エビと剣先イカ、夏野菜炒め」(2,000円)、「鯛の天ぷら甘酢あんかけ」(1,900円)、「豚の角煮とゴーヤ、夏野菜ピリ辛炒め」(1,900円)に加え、一食限定では「小鯛のピリ辛四川風」(1,900円)、「茄子のピリ辛香り煮」(1,600円)など、トータルで12種類がオンメニュー。「迷ってもらいたい」という店主のサービス精神のたまものである。

「片口鰯のマリネ」「海鮮蒸し餃子」「蒸茄子の夏野菜ソース」「にんじんとセロリの山椒風味」「自家製柴漬け」「さつまいものつるの胡麻和え」(全て取材時)といったセットの小鉢や付け合わせも充実していて、細部まで行き届いた仕事ぶりがうかがえる。「おいしいものを食べてもらいたいから、やれることは全てやる」という気持ちが注ぎ込まれた食事で、腹も心も満たされてみては。

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定食堂 金剛石

イタリアンシェフや鉄板バル「ミコノス」の料理長として腕を振るってきた店主の中尾浩基。スタッフの賄い飯だったスパイスカレーを、週一度のランチとして提供したところ大評判になり、2017年に独立し「定食堂 金剛石」をオープンした。

店内はレトロで落ち着くアンティーク調。「一皿で栄養バランスも取れて満足できるように」と、屋号に掲げた「定食」スタイルで日替わりカレーを2種類用意する。取材時は、「タンドリーバターチキンカリー」と「コフタ(羊と鶏の肉団子)カレー」の合いがけ(1,300円、以下全て税込み)。トッピングは、五香粉と八角で味付けしたトロトロの「台湾風煮卵」(100円)がおすすめだ。

現地のスタイルをリスペクトし、チキンカレーにはバターを直接トッピング。じわじわと溶け出したバターがコクを深め、スパイスの味わいを口いっぱいに広げてくれる。

ランチ限定メニューの、魯肉飯(ルーローファン)とスリランカの豆カレーを組み合わせた創作メニュー「魯肉豆飯」は、汁物が付いて1,200円(不定期の提供)。夜は和食からエスニックまで、幅広い定食が楽しめる。カレーも含め全て日替わりのため、公式Xは要チェックだ。

  • カフェ・喫茶店

囲茂庵

松屋町の古い町屋をいかして造られた複合施設「れん」。大阪市の中心地にありながらもゆったりとした時が流れるその一画に、クレープ屋兼カフェの「囲茂庵(イモアン)」がある。見えるのは、童心にかえって「クレープくーださい!」と店頭で言いたくなるような、木枠の小窓。丁寧に1枚ずつ焼き上げられていく数分間は、現代には珍しく待つことを愛おしく感じられる時間といえる。

聞けば、店主は元々は若者の街・アメリカ村でクレープ店を営んでいたそう。生地だけでなく生クリームやカスタードも手作りのクレープは500円からで、定番の「生チョコバナナ」も550円で楽しめる。

イチゴやクリなど、旬のフルーツを使用した季節限定のクレープも人気が高い。しっかりとボリュームがある一方で、生クリームはふんわりとした軟らかな甘さが特徴的。30年以上たった今でも、アメリカ村時代の客が「やっぱりここのが一番」と訪れてくるというのも納得だ。

自家製の梅シロップで作る「梅ソーダ」(700円)など、店内で食べられるフード&ドリンクメニューも充実している。おすすめは「ハッシュドビーフライス」(サラダ付き・800円)で「子どもを連れてきても食べられるように」という言葉通り、丹精込めて作られた優しい味わいが体に染み渡る。まるで理想的な実家のように、ホッと一息つける空間が都心にあるのはうれしいことだ。

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谷町六丁目駅から徒歩5分のところにある、潜水艦を模して造られたバー。鉄の扉を開け、一歩足を踏み入れると、そこはまるで別世界だ。

なぜこのような内装にしたのかを尋ねると、「潜水艦やスチームパンクが特別好きだったわけではないですが、こういった空間で人と向き合ったり、触れ合ったりしたかったのです」とのこと。マスターおすすめのジントニックをたしなみながら、この空間をじっくり堪能しよう。

最後に、トイレも期待を裏切らないクオリティーの高さなので、足を運んだ際は忘れずにチェックしてほしい。

  • ショッピング

こんぶ土居

大阪の伝統と味の基礎を1903年創業から歴史とともに伝える、「昆布」を専門に扱う老舗。店頭にある木製の看板をはじめ、店内のしつらえからは歴史だけではなく、信念も伝わってくる。「こんぶ土居」は常に本物とは何かを考え、どのようにそれを販売・拡散していくのかということに余念がない店なのだ。

例えば、原材料の表記一つとっても、国の基準を守ることはもちろんのこと、加工者として消費者のことを第一に考えた正確かつ有益な情報を伝えようとする意思が強い。それは、扱う商品が本物だからこそできる取り組みだといえる。

昆布やだし文化を知ろうとする人たちに対する態度も寛容で、フランスやアメリカ、台湾など、海外の有名シェフからの信頼も厚く、たびたび注文や相談を受けている。4代目の店主は、大阪の伝統文化を知ってもらうため、海外での講演活動にも積極的だ。

店で販売されているのは、大阪で長年使われてきただし用の「真昆布」を中心に、加工品のとろろ昆布や塩昆布などのつくだ煮類、薄めて使う瓶詰めの「十倍出し」のほか、だしを抽出する過程で出るだしがらを有効活用して開発したつまみ向けスナックも扱う。

おいしさのためだけではなく、食材を有効活用するにはどうすればいいのか。店主が、フードロス問題と真摯(しんし)に向き合い2022年に出版した書籍『捨てないレシピ』も注目に値する。

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  • ショッピング

MARADONA RECORDS

下町情緒あふれる空堀商店街があり、数々の長屋が並ぶ谷町6丁目。近年、若者による新店のオープンが増えているが、2021年についにレコード店がオープンした。その名も「MARADONA RECORDS(マラドーナレコーズ)」だ。

店主は、大阪の老舗レコード店「KING KONG アメリカ村店」の出身。レコードを好きになったきっかけは、イギリス南東部の街・チチェスターで暮らしていた高校時代だという。通っていた地元のレコード店の店主から、ブラックミュージックやヒップホップ、ファンクなどを教えてもらううちに、自身もレコードの魅力にどっぷりとハマっていったそうだ。

「漠然といつか店をやりたいと思っていました。コロナ禍で外にいけなくなった時に、音楽を聴いて元気になってほしいと思って」とオープンした経緯を語る。オールジャンルの店を目指し、初めは自身のコレクションから商品を並べ、現在はLPレコード約2000枚、7インチが約400枚、CDが約400枚ほど揃う。

ビンテージのマッキンアンプを通した環境で試聴ができるのも、同店の魅力。買い取りをしてくれるのはもちろん、ほしいレコードの注文も受け付けてくれる。年配の人からのオーダーもあるといい、見知らぬ客同士の交流も当たり前だ。若者も年配もフラットに交流できるのが谷六の魅力だが、その姿をここでも目にすることができるだろう。

  • ミュージアム

直木三十五記念館

自身の名を冠した文学賞「直木賞」で知られ、大衆文学で確固たる地位を築いた作家の直木三十五の業績を生まれ育った地で紹介する「直木三十五記念館」。直木を通して、さまざまな文化や情報を発信する拠点となることを目指して設立された。

同氏の年表に従い、由縁の品を展示。中学時代の書道の習作や、繰り返し出版されている代表作の「南国太平記」は5種類が揃っている。また、直木がうつぶせで原稿を書く習性があったことから、館内の3分の2が畳敷きになっているのも特徴的だ。

大阪をもっと探訪するなら……

  • Things to do

大阪の交通の要所である、梅田。大阪駅もここにあり新大阪駅までは一駅、私鉄の駅もあり、関西各地とつながっている。駅と駅を結ぶ迷宮のような地下街が巡らされ、通勤に観光に多くの人が行き交う。

現在、再開発が進行しており、2025年3月には「グラングリーン大阪南館」が完成。ますます人をひきつける、いま注目の街だ。

ここでは梅田に近年登場した新しい顔から定番まで、うどん、立ち飲み、イタリアン、純喫茶、ショップなど20のヴェニューを紹介する。来阪時に通過するだけではもったいない。ぜひ梅田で大阪気分を満喫してほしい。

  • ナイトライフ

夜のとばりが降りる頃、大阪の街はますます活気付くようにすら感じられる。本記事では、工業地帯に突如現れるクラブや、極上の音とともに酒が楽しめるバー、チームラボが手がけるアートプロジェクト、23時まで営業する屋外インフィニティプール、息を飲む美しさの夜景が広がる展望台、一夜の終着地にもぴったりの老舗うどん店など、幅広いジャンルのヴェニューをカテゴリごとに紹介する。

遊びたい夜はもちろんだが、しっとりと過ごしたい夜にも満足できる、粒揃いのスポットばかりのはず。最高の夜遊びの参考になれば幸いだ。

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  • Things to do

難波とともに「ミナミ」を構成する心斎橋は、大阪屈指のショッピングエリア。御堂筋を中心に海外のブランド店やデパートが立ち並ぶ。

東心斎橋には居酒屋やバー、高級クラブが点在する夜の街が広がり、ネオンきらめく店が連なる。また、西心斎橋にはカルチャー発信地のアメリカ村があり、関連記事で紹介するレコードショップなども多数店を構える。同じ街でも、複数の顔を併せ持つのが魅力だ。

ここでは、心斎橋・アメリカ村の北に位置する本町とともに20のスポットを紹介する。粉もんからビーガン料理、アートスポットまでユニークなヴェニューを包み込む大阪随一の繁華街を探訪してみては。

  • Things to do

グリコやかに道楽の巨大な看板が目をひく道頓堀は、大阪の紹介映像で必ず映し出される街。また難波には笑いの殿堂「なんばグランド花月」があり、このミナミの2つの繁華街は大阪を象徴するヴェニューにあふれたエリアだ。

ここでは、たこ焼きや上方寿司といった大阪名物から中古レコード店、料理本専門店まで、個性際立つ店を紹介する。

難波にあるディープスポット「味園ユニバース」は閉館が決まってしまったが、姿が見えなくなっていたくいだおれ太郎はリニューアルするビルで巨大化して帰ってくる。街のさまに入れ替わりはあるものの、変わらない大阪の姿がここにはある。こてこての大阪を味わうなら、難波と道頓堀を訪ねてみよう。

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  • ショッピング

東京の道具街といえば、「かっぱ橋道具街」が知られているが、それより古い歴史を有するといわれるのが、大阪ミナミの「千日前道具屋筋商店街」だ。全長約150メートルのアーケード商店街には、料理道具の専門店がずらり。飲食店を始めるなら道具筋へ、と厨房品が何でも揃う場所として知られている。日本の丁寧な手仕事の評価は高く、近年では外国人観光客の姿も目立つようになった。

ここでは刃物から食品サンプル、プロが通う料理書を中心に扱う書店まで、道具筋の専門店を6つ紹介する。料理道具は手入れを怠らなければ、末永く使える。一生ものとの出合いを求めて出かけてみては。

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