山下金物
Photo: Kyoko Otsuka (karamomo)
Photo: Kyoko Otsuka (karamomo)

千日前道具屋筋商店街でしかできない6のこと

関西きっての道具街で運命の出合いをする

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東京の道具街といえば、「かっぱ橋道具街」が知られているが、それより古い歴史を有するといわれるのが、大阪ミナミの「千日前道具屋筋商店街」だ。全長約150メートルのアーケード商店街には、料理道具の専門店がずらり。飲食店を始めるなら道具筋へ、と厨房品が何でも揃う場所として知られている。日本の丁寧な手仕事の評価は高く、近年では外国人観光客の姿も目立つようになった。

ここでは刃物から食品サンプル、プロが通う料理書を中心に扱う書店まで、道具筋の専門店を6つ紹介する。料理道具は手入れを怠らなければ、末永く使える。一生ものとの出合いを求めて出かけてみては。

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ゑびすや金物店

どんな商品でもワンクリックで家に届く時代。小さな画面内での買い物に慣れてしまった私たちを、圧倒的な商品数で出迎えてくれるのが、千日前道具屋筋商店街にある厨房(ちゅうぼう)機器・調理器具専門店「ゑびすや金物店」だ。

シンクに鍋、コーヒーメーカーに掃除用具……。商品数は2万点、取り扱い点数で言えば10万点を超える。店内に足を一歩踏み入れれば、ズラリと立ち並ぶ商品の迫力に息を呑むだろう。100点満点のスマイルで「店を開業するのに必要なものは全て揃います」と取締役の柴田昌功が言う通り、1938(昭和13)年に創業してから変わらずプロの面々に愛されてきた。一般客ももちろん購入できる。

ジャングルのような店内はブラブラしているだけで楽しいし、ユニークかつ実用的なグッズは土産にもぴったりだ。売れ筋は手の熱が伝わることでアイスクリームを食べやすくしてくれる「アイスクリームスプーン」(566円、以下全て税込み、取材時)や、かゆい所に手が届くようなキッチングッズ「カボチャピーラー」(815円)、「にんにくスライサー」(492円)などだ。

ネットショッピングにはない楽しみと言えば、やはり接客だろう。目の前で繰り広げられる「THE・大阪なボケ&ツッコミ」の応酬に、店内は笑いが絶えない。ハケを探している客には、2代目社長が「誰がハゲじゃ!…こちらです」と案内する鉄板ネタも。 そんなゑびすや金物店が今後目指しているのは「Amazon Go」のようなレジなしの店舗だという。理由は「接客だけに集中するため」。

さらなる接客の集中砲火を浴びられるとなれば、「なんばグランド花月」と並ぶ新たな大阪のエンタメスポットになる日も近いかもしれない。

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徳蔵 大阪なんば店

千日前道具屋筋商店街に並ぶ店の一つ。木を基調にした店内は、一見おしゃれな眼鏡屋か雑貨店かと見間違うほどカジュアルな雰囲気だ。ところが、取り扱っているのは400年の歴史を持つ高知県の伝統工芸品・土佐打刃物を中心とした日本の良質な包丁。高知県は古くから林業が盛んな土地で、くわやおのといった農林用の刃物が多く製造されてきた。

「徳蔵」では、そんな昔ながらの技術を継承して作られた包丁が購入できる。 目を奪われるのは、黒くさびた包丁の渋さ。「さび」といっても実は2種類あり、いわゆる「赤さび」は金属をボロボロにしてしまう性質を持つ。その一方で、「黒さび」は赤さびから金属を守る役割を果たしているのだという。焼き入れで黒くなった表面をあえて残した「黒錆包丁」は、まさにさびをもってさびを制すという知恵の結晶といえる。

うれしいのが、その価格。日本の家庭で最も使用されているのは野菜から肉までオールマイティーに活躍する三徳包丁だが、165ミリメートルのものが16,170円(取材当時)とリーズナブル。これも土佐打刃物の特徴の一つで、職人が鍛造から研ぎ上げの全工程までを一貫で作業することでコストが抑えられる。さらに徳蔵は職人と直接取引を行うことで、私たちが「伝統に触れる機会」を身近にしてくれているのだ。

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波屋書房

往来豊かな千日前・なんば南海通りには、少しでも人々の気を引こうと色とりどりの看板があふれている。そんな中で大きな紙に墨一色、堂々たる筆遣いで書かれた新刊図書の案内に思わず足が止まる。ここは1919年から続く老舗書店「波屋書房」だ。

店のおよそ半分の棚には、日本料理を筆頭にフランス料理やイタリア料理、酒やチーズ、さまざまな調理法といった料理や食に関する書籍がずらり。プロの料理人が求めるものを中心に取り揃えており、1冊丸ごとハモについて書かれた朝尾朋樹の「秘傳 鱧料理 百菜」など高度な専門料理書が並ぶ。

どのように入荷するタイトルを決めるのかを店主に尋ねると、「プロの求める本はプロが知っている。取り寄せの依頼を受けたら2冊発注し、1冊は注文客用、もう1冊を店に並べることで棚が出来上がっていったんです」とのこと。

客と真摯(しんし)に向き合い、長く愛されてきたからこそエピソードにはこと欠かない。ここで出合った本に感銘を受け、その著者の店に弟子入りした青年もいたという。時が流れ、今度は彼の出した本が平積みにされている。まさに「1冊の本が人の運命を変えることもある」という言葉を体現しているような店だ。

プロの料理人はもちろん、さまざまなレシピ本や世界中の食文化にまつわる本、食のエッセーも充実しているので、「食べる専門」の人でも楽しめるだろう。食い倒れの街をもう一歩深く楽しみたいなら、ぜひ波屋書房を訪れてほしい。

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一文字厨器

世界的に見ても評価の高い日本の包丁の三大産地といえば、岐阜県関市、新潟県三条市、そして大阪府堺市。プロ用和包丁のシェアを90%以上を占める「堺包丁」を広めることに尽力しているのが、千日前道具屋筋商店街にある「一文字厨器」だ。

1953年創業、老舗の多い「道具屋筋」の中でもとりわけ威厳を保った店構えをしている。扱うのは同社オリジナル製品が中心で、ブランド名である「堺一文字光秀」の堂々たる看板の下、店内には2000種類もの包丁が並ぶ。

堺包丁の最大の特長は、ほかとは一線を画する切れ味。「生産性を犠牲にしてでも切れ味を追求したいと、現在も職人の分業制が貫かれているんです」と3代目当主が力強く語る。家業を継ぐ前に働いていた広告業界での経験を生かし、堺包丁の伝統継承に取り組んでいる。

例えば公式ウェブサイトでは、包丁そのものについての造詣を深められる読み物を充実させている。またケアが難しいといわれる鋼の包丁だが、メンテナンス方法の丁寧な解説ページはなんと6カ国語対応だ。少々ハードルが高く感じられるかもしれないが、家庭の味も包丁で変わる。来阪を機に、職人の手で生み出された一本の包丁と一生をともにしてみては。

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食品サンプル専門店 デザインポケット大阪本店

千日前道具屋筋商店街にある食品サンプル専門店。もともと飲食店向けデザインを手がけていた会社が、2011年にオープンした。現在では食品サンプルの製造・販売をはじめ、制作体験も提供している。

人気の食品サンプルは、大阪名物のたこ焼きやエビフライなど。食品サンプルの制作体験は、たこ焼き、寿司、抹茶パフェから選べてどれも45分程度で完成する。当日の申し込みもでき、団体の場合は事前予約で対応できるという。「ホンモノ」らしく作るためのコツを聞くと「どれだけ丁寧にできるか」と答えが返ってきた。地道な作業の積み重ねが大切ということだろう。

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山下金物

今では想像もつかないことだが、1945年の終戦時、大阪のほとんどが焼け野原だった。当然のことながら、当時は食糧も物資も不足していた。「鍋でも何でも、並べてたら飛ぶように売れました」と、千日前道具屋筋商店街にある「山下金物」の4代目の祖母は語る。ここは、その時代から続く店のうちの一つだ。

昔は鍋なども多く販売していたが、現在は堺包丁とたこ焼き器(通信販売のみ)などの熱調理器とその関連商品に特化している。包丁はもちろんのこと、熱調理器も大阪で作られたものを中心に取り扱う。まさに「大阪の金物屋」だ。

店に訪れる人の多くは、堺の老舗メーカー「青木刃物製作所」が作る「堺孝行刃物」が目当て。中でも観光客に人気が高いのは、ダマスカス包丁で、唯一無二の美しい模様には思わず所有欲をそそられる。切れ味が抜群の堺包丁だが、一般にステンレス製の包丁は研ぎにくいといわれる。同店ではアフターケアのサービスもバッチリで、包丁を預ければ、直接取引を行っている堺の工場でメンテナンスしてくれる。大切な一本と長く付き合えるのもうれしい。

また、店の所々には英語で書かれた説明文が。聞けば4代目はカナダ留学の経験があり、英語が堪能だ。海外から訪れた人にとって、その国の伝統工芸品について直接話を聞けるのはうれしいところだろう。

※土・日曜・祝日は不定休のため、公式ウェブサイトを要確認

大阪をもっと深く旅するのなら……

スパイスカレーの聖地とも言われる大阪。4年連続でミシュランガイドに掲載されたレジェンドや、一部で「幻」と呼ばれているカレーなど、さまざまなタイプに分かれている。

食欲をかき立てられるスパイスの香りを思い切り吸い込み、見た目も美しいカレーたちに心をときめかせたい。食い倒れの街、大阪で、めくるめくカレー探しの旅に出よう。

  • 音楽

東京は世界的にもレコードショップが多いとされているが、ここ大阪も忘れてはならない。「ディグ」目的で旅する価値のある、個性的なレコード店が揃っている。

オールジャンルを扱いビギナーから玄人まで満足できる店舗や、ワールドミュージックという定義がまだなかった頃から現地で買い付けをしていたヴェニュー、老舗から独立した若き店主によるレコード店など、探し求めていた1枚に出合えるかもしれない。

思いがけない発見やスタッフのレコメンドも醍醐味のレコードハンティング。1日と言わず、くまなく巡りたい。

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その土地ならではのローカルフードは、旅の楽しみとして欠かせない一つだ。しかしながら「お取り寄せ」が充実した今、ただ単に名物を味わうだけではもの足りない。そんなフーディーのために、ここでは「真・大阪名物」として、「おいしいものがある場所を目指す」旅を提案したい。

難波でしか味わえない1店舗のみで営業を続ける豚まんの店や、革新的なコース料理、店主の人柄が現れたラブリーなビーガンスイーツなど、ここでは定番だけではない大阪名物を紹介する。大阪でしか体験できない味わいをかみ締めよう。

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  • Things to do

「あの時代」にタイムスリップしたような感覚が味わえるレトロスポット。大正レトロや昭和レトロ、平成レトロなどその時代はいろいろあれど、当時の趣が残る空間に身を置くという体験こそが多くの人を魅了しているのだろう。

ここでは、大阪で訪れたい5つの昭和レトロなスポットを紹介する。全国でも非常に珍しい「スマートボール」の専門店や、コーヒーブレイク中にどこか遠くの惑星へとワープしてしまいそうな喫茶店など、映画のワンシーンに入り込んだような気分を堪能しよう。

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  • アート

アートの街として知られる北加賀屋や、2022年に開館した「大阪中之島美術館」など、アートの面でも進化し続ける大阪。話題のスポットだけではなく、パブリックアートやロマンの詰まった建築、レトロビルなど、街のあちらこちらにインスピレーションの源がちりばめられているのもこの街の魅力である。

ここでは、必ず行きたい美術館からうっとりするようなウィリアム・メレル・ヴォーリズの建築、コーヒーブレイク中にどこか遠くの惑星へとワープしてしまいそうな喫茶店まで、感性が刺激されるアートスポットを幅広く紹介する。

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