Tomohiro Fukuzawa pictured with SkyDrive’s SD-03 prototype
©SkyDrive福澤知浩と試作3号機の『SD-03』
©SkyDrive

大阪・関西万博デビューを目指す「空飛ぶクルマ」は何を可能にするのか

SkyDrive代表の福澤知浩が語る『SD-05』の強みと開発への思い

寄稿:: Io kawauchi
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※本記事は、『Unlock The Real Japan』に2022年3月21日付けで掲載された『Blue-sky thinking』の日本語版。

『2025年日本国際博覧会』(以降、大阪・関西万博)では、「移動」が一つの目玉コンテンツになるかもしれない。2018年7月の創業以来、「空飛ぶクルマ」を開発しているスタートアップ、スカイドライブ(SkyDrive)は2021年9月、『大阪・関西万博』でのエアタクシーサービス提供に向けて、大阪府、大阪市と連携協定を締結した。

空飛ぶクルマとは電動垂直離着陸機のことで、eVTOL(イーブイトール=Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft) とも称される。エアタクシーが実現すると、既存の交通インフラなら20分から40分かかっていたところへ5分から10分で行けるようになり、大阪の景色を空から楽しみながら、快適に最短距離を移動できるようになる。

スカイドライブを率いる福澤知浩に開発への思いや、その道のりについて話を聞いた。

福澤はトヨタ自動車出身。2010年、東京大学工学部卒業後に入社してから、自動車部品のグローバル調達に従事した。

社内にいる「いろいろなものに興味を持って、あれこれやりたくなっちゃう人たち」との飲み会の際、「革新的なクルマを作りたい」という話題で盛り上がったことがきっかけで、2012年に有志団体のカーティベーター(CARTIVATOR)を設立した。

共同代表に就き、車の未来形について話し合う中で、「一番面白い!」という声が多かったのが、空飛ぶクルマだった。当初はメンバーがそれぞれのプライベートの時間を使って開発していたが、目標としていた2020年のデモフライトに間に合わせるには、時間が足りなかった。

この開発を加速させるため、2017年にトヨタ自動車を退社し、モノづくりのコンサルタントとして独立していた福澤がスカイドライブを立ち上げた。

「実際に空に飛ばすのはすごくハードだけど、トライしてみよう」

当時、空飛ぶクルマを完成させる確信があったのかと尋ねると、福澤は笑った。

「僕にもメンバーにも、そんな自信はありませんでした。本当にできると思ったら、ほかのメンバーも会社を辞めていたと思います」。

それでも起業したのは「物理的には作ることができる。実際に空に飛ばすのはすごくハードだけど、トライしてみよう」と考えたからだ。

スカイドライブが始動した2018年から、開発が本格化。同年9月に初号機『SD-01』で走行試験と屋内飛行試験を行い、翌年12月には2号機『SD-02』で有人飛行試験を実施。そして当初から目標としていた2020年8月には、3号機『SD-03』で4分間の公開有人飛行試験を行った。

福澤はこの間、資金調達にも奔走し、2020年8月までに累計51億円を調達。三菱航空機でチーフエンジニア、副社長を歴任した岸信夫が技術最高責任者(CTO)として加わるなど、人材の確保にも力を入れてきた。社員数は右肩上がりで増えており、現在は110人。大手企業からの転職組や、海外から参画した外国人もいるそうだ。

2021年10月には、国土交通省に空飛ぶクルマの型式証明を申請して、受理された。これは航空法に基づいて安全基準、環境基準を満たしているかどうかを国土交通省が審査するもので、eVTOLメーカーの中で国土交通省に型式証明申請が受理されたのは、スカイドライブだけである。

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世界の自動車市場を席巻する日本メーカーを目指して

スカイドライブは現在、2025年の完成を目指して新型機『SD-05』の開発を進めており、好天下であれば10分から20分、10キロ前後の飛行が可能になるという。

投資銀行のモルガンスタンレーはeVTOLの市場が2050年までに900兆円を超えると試算しており、欧米、そして中国を中心にeVTOLメーカーが続々と誕生している。

そうした状況の中で、『SD-05』の強みはどこにあるのか?「自動車と同じぐらいのコンパクトサイズで軽いので、いろいろなところに着陸しやすいのが特徴です。ゆくゆくは、燃費の良さと使いやすさで世界の自動車市場を席巻した日本メーカーのようになりたいですね」

空飛ぶクルマは、移動だけでなく社会を変えると語る福澤。「空飛ぶクルマ」でどこに行きたいですか?という質問には、未来を表すような答えが返ってきた。

「僕は常に乗っていたいです。地上を移動するニーズがないので。最短距離で、景色も良くて気持ちいいなら、それが一番いいですね」

福澤知浩

SkyDrive代表取締役CEO / Chief Executive Officer

東京大学工学部卒業。トヨタ自動車にて自動車部品のグローバル調達に従事した。同時に多くの現場でトヨタ生産方式を用いた「カイゼン」をし、原価改善賞を受賞。2017年に独立し、製造業の経営コンサルティング会社を設立。20社以上の経営改善を実施。2018年にSkyDriveを創業、代表に就任。

大阪万博についてもっと知る……

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大阪で2025年に開催される2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)』。そこで、「空を飛ぶクルマ」と称される乗り物を目にすることができそうだ。 

日本経済新聞によると、同博覧会で利用が予定されている「空飛ぶクルマ」の運行計画が、2022年3月18日に明らかにされた。報道によると、開発を主導したのはスカイドライブ(SkyDrive)社。地点間の輸送や周辺での遊覧飛行を目的として、会場と周辺の空港や大阪市内などを結ぶ8路線で1時間当たり20便程度の運行を目指すという。

2022年3月22日(火)、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は東京プリンスホテルで記者会見を行い、『2025年日本国際博覧会』(以降『大阪・関西万博』)公式キャラクターデザインの最優秀作品を発表した。選ばれたのはデザインレーベル、マウンテン マウンテン(mountain mountain)によるデザインだ。

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※本記事は、『Unlock The Real Japan』に2022年3月21日付けで掲載された『Tower records』の日本語版。

1970年に開催された『日本万国博覧会』(以降、『大阪万博』)において最大のシンボルとなったのが、芸術家の岡本太郎が制作した『太陽の塔』である。岡本は戦後間もない時期から縄文土器や沖縄および東北の伝統的な習俗、メキシコの壁画への関心を深め、高度経済成長期の日本における魂のありかを追い求めた。

高さ70メートルを誇る「太陽の塔」は岡本のそうした思想を象徴する作品であり、大阪万博が掲げた「人類の進歩と調和」というテーマに対する痛烈なアンチテーゼでもあった。

この『太陽の塔』を岡本とともに作り上げたのが、「テーマ館」のサブプロデューサーを務めた千葉一彦だ。千葉は日活の美術監督として『幕末太陽傳』(1957年)、『日本列島』(65年)、『八月の濡れた砂』(71年)などの映画作品を手がけた経歴を持つ。

万博においては岡本の右腕役を担い、2人がタッグを組んで作り上げた最高傑作が『太陽の塔』であり、その内部に作られた一大展示作品『生命の樹』だった。2018年には48年ぶりに『太陽の塔』の内部が公開され、それに合わせて『生命の樹』も修復された。

岡本とのエピソードを交えながら、大阪万博の貴重な裏話を千葉に語ってもらった。

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