「優しいものを食べたい」と感じた時、うどんを選ぶ大阪人は多い。コシを楽しむ讃岐スタイルとは違い、甘い「お出汁」に平べったくて柔らかいうどん。そんな大阪うどんを食べたいなら、地元では「谷九(たにきゅー)」と呼ばれる谷町九丁目に位置する「ふる里」へ行くべきだ。
元々は屋台から始まったというこの店の創業は、およそ半世紀前。昭和の雰囲気をそのまま残した店内は、いい意味で時が止まっているかのよう。ところが、せっかちな大阪人を相手にしてきただけあって、提供スピードはかなり速い。
定番の「きつねうどん」(800円、以下全て税込み)などは、ショーケースに並んだ新鮮なネタで作られた握り寿司や巻き寿司(350円から)を選んで席に戻ると、もうスタンバイしていることも。しかしどれほど気持ちが急いていても、朝一番で丁寧に炊かれただしが体に染み込んでいく間だけは、ゆったりとした気分に浸らざるを得ない。「冷やしそばカツ」(夏季限定、1,200円)や「はまぐりうどん」(冬季限定、1,500円程度)といった季節限定のうどんを選ぶのもいいだろう。
何よりうれしいのが毎日24時間営業(1月1日以外)ということ。朝方には、出勤前の会社員や朝帰りの若者が元気をチャージしていく姿も。「いつでもお客さんが来られるように、開けとかなアカンと思ってます」と店主。休みは元日のみの心意気にも感涙。悲しい時もうれしい時も、いつでも受け入れてくれるという安心感は、この店のうどんと共に大阪の大きな財産といえる。