泉南市の住宅街にあるカフェ。多くの人がわざわざこの店に足を運ぶのは、店を営む河内姉妹が生み出すカラフルな「フルーツの世界」を体感するためである。
この店で楽しめるのは、サツマイモのほか、モモ、イチゴ、マンゴーといった季節のフルーツをふんだんに使用したスイーツだ。夏はかき氷、秋・春はクレープ、バタタ、ベニエといったメニューを展開する。「本当に安心して食べられるものを」と、フルーツはもちろん、砂糖や薄力粉に至るまで食材は全て国産だ。思わずワッと歓声を上げてしまうような見た目もさることながら、選び抜かれた素材から生まれる深い味わいこそが同店の魅力である。
秋に提供される「バタタ」(500円、税込み)は、1〜2カ月かけて低温熟成させたサツマイモを焼き芋にし、さらに冷蔵庫で2〜3日寝かせたものを米油で揚げたスイーツ。時期によって使う品種は変わる。
取材時は茨城県産の「シルクスイート」だった。風味豊かな皮に始まり、熟成によって引き出された蜜の柔らかな甘みが、ねっとりとした食感と相まっていく。自然の豊かさに思いを馳せずにはいられない幸せな食体験だ。熟成度に関しては試食を繰り返し、納得がいくまで「GOサイン」は出さないという。
これほどストイックであるにもかかわらず、「大それたこだわりはないですよ」と声を揃えて笑う2人。店名の「Bake icoi」(ベイクいこい)の中にある「憩い」は祖母の喫茶店名から受け継いだという。この店に流れるフラットな空気感に触れることこそ、「憩い」なのかもしれない。