梅田にある大規模な地下街「ホワイティうめだ」に外気を送り込むための施設。「阪神梅田本店」「阪急うめだ本店」「曽根崎警察署」に取り囲まれた車通りの多いエリアにあって、突如として現れる巨大な姿が特異な存在感を放っている。林立する塔のなだらかな曲面にステンレスパネルが貼り合わされた、メタリックでありながらも有機的なイメージを想起させる建造物は、東京都の「日生劇場」などで知られる戦後日本を代表する建築家・村野藤吾の設計によるもので、1964年に完成した。
塔自体が建つエリアへと続く横断歩道はないため近づくことはできないが、JR大阪駅と「阪神梅田本店」を結ぶペデストリアンデッキから眺めることができる。御堂筋のイルミネーションイベントなどではライトアップされることもあり、日中とはまた異なる近未来的な景観が楽しめる。
自身も宝塚市に住み、大阪を拠点に活躍した村野の作品は、関西では比較的見る機会に恵まれてはいるが、中に人が入って利用することを想定していないオブジェ性の高い吸気塔ならではの同建築家の魅力をうかがい知ることができるだろう。