Expo 2025 preview: Netherlands
Photo: Commissioner-General for the Netherlands at Expo 2025 Osaka, KansaiCommissioner General Marc Kuipers
Photo: Commissioner-General for the Netherlands at Expo 2025 Osaka, Kansai

大阪・関西万博のオランダパビリオンで体験できること

マーク・カウパース政府代表が語る、ひときわ目を引くパビリオンの内側

Ili Saarinen
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「2025年日本国際博覧会」(以降「大阪・関西万博」)の開幕まで残り4カ月を切り、待ちに待った開催が目前に迫っている。国や地域、国際機関のパビリオンやテーマ別のシグネチャーパビリオンで提供される展示や体験の詳細が少しずつ発表され、会場の人工島・夢洲ではそれらの建物の一端を現しつつある。

2025年4月13日(日)の開幕を前に、夢洲で何を見て、楽しむことができるのか。タイムアウト東京では、今後数カ月にわたっていくつかのパビリオンを詳しく紹介し、関係者に話を聞く予定だ。まずは、日本にとって縁の深い国、オランダのパビリオンについて明らかにしよう。

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Photo: Consulate-general of the Netherlands in OsakaCommon Ground - Theme of the Netherlands Pavilion

出島に次ぐ「もう一つの人工島」

日本とオランダは4世紀以上の歴史を共有している。多くの経験をともにした両国の切っても切れない関係は、たとえば100以上のオランダ語由来の言葉が日本語として定着するという結果にも表れている。15〜19世紀半ばまで、オランダは西洋で唯一日本との貿易を許された国であった。長崎の出島を拠点としたオランダは、日本の西洋への窓口として、商業上のパートナーであっただけではなく、医学、科学、工学の知識も共有したのである。

「この交流の影響は現在でも感じられます」と、オランダ陳列区域政府代表のマーク・カウパース(Marc Kuipers)は語る。

「私たちのパビリオンのテーマは『Common Ground』、つまり「共創の礎」です。世界的な課題に対処するためには、[大阪・関西万博で]世界が共通の基盤に集い、アイデアを交換し、交流し、つながりあうことが必要だと考えています。夢洲のパビリオンは、もう一つの人工島である出島が何世紀にもわたってそうであったように、共通の基盤を認識できる『形あるエリア』となるのです」

※「Common Ground」という考え方について、以下の動画を確認しよう

大阪・関西万博の目標は、より持続可能で多様な未来の社会をデザインするため、国際的な協力を促進することである。カウパースは、国境を超えた交流と協力の場を共有することで、今日の多くの地球規模の問題を解決に近づけるための可能性を秘めたアイデアが生まれるのではないかと話す。

気候変動、食糧不安、パンデミックといった課題は、どの国も単独では解決できない。ゆえに、協力する必要があるのだ。オランダと日本の協力関係は現在、食品や農業技術、再生医療、量子テクノロジーやナノテクノロジーなどの最先端分野にも及んでいる。カウパースは、大阪・関西万博がこのような共同イニシアチブをさらに拡大し、加速させるきっかけになると考える。

「大阪・関西万博は、私たちの今現在の取り組みを増幅させるための完璧なプラットフォームです。開催に向けてオランダ・日本間の知識やイノベーションの交流はすでに活発化しており、開催期間中も拡大し続けるでしょう。変化を生み出し、イノベーションを提供する人々は、私たちの大阪・関西万博参加における主要なターゲットです」

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Photo: Copyright AND BV & Plomp

「循環型建築」というあるべき姿へ

オランダのパビリオンは、科学者、先見者、意思決定者がコミュニケーションをとり、協力するための空間を提供することを重要視すると同時に、一般来場者にとっても視覚的・体験的に魅力があり、訪れて楽しめるものだと、カウパースは太鼓判を押す。

「パビリオンの建築は、共創の礎の上にある新しい幕開け、というアイデアを形にしたものです」
中心的な要素は、波型のファサードからそびえ立つ直径約11メートルの球体、「man made sun -次世代への太陽-」。これは未来へのインスピレーションを象徴しているという。

また、大阪・関西万博会場を取り囲む高さ20メートルの大屋根リングからパビリオンを見ると、パビリオンのまた違った一面が楽しめる。カウパースは「屋根は鏡のように機能し、空に浮かぶ太陽、月、雲を映し出すのです」と説明した。

持続可能性と廃棄物の削減が大阪・関西万博の基本原則であるため、会場の全てのパビリオンは環境に優しい手法で建設・運営・廃棄されなければならない。オランダチームは、持続可能な循環型建築のパイオニアである建築家のトーマス・ラウ(Thomas Lau)とともにパビリオンを設計し、この使命を力強く担っている。ラウのパビリオンのアイデアには「マテリアル・パスポート」と呼ばれるシステムが含まれている。

これは、マテリアル(素材や原材料)一つ一つにID(識別子)を付与し、経済システムの中で永遠に循環させようとする試みのことだ。パビリオンの建設に使用された全ての部品は、大阪・関西万博終了後にパビリオンを解体し、簡単に別の場所で再建できるように設計されている。

「たとえ全く同じ形の建物とはならなかったとしても、パビリオンが解体されれば、私たちの建設会社は全ての資材を再利用できます」

また、マテリアル・パスポートの日本への導入は、より根本的な影響も与えるかもしれないとカウパースは示唆する。

「日本の大手建設会社数社がすでにこのシステムに関心を示しています。マテリアル・パスポートの普及はこの国の建築・建設シーン全体を、より持続可能な方向へと導く可能性に満ちています。

パビリオンの内部で体験できることについての詳細はまだ明かせない部分もありますが、アウトラインは明確です。中に入ると小型版の球体が手渡されます。それを持って歩くと、来場者自身のエネルギーとつながり、またパビリオンとの接触を通してエネルギーが得られるのです」

さらに、道中にある「コネクション・ポイント」では、オランダが関与するさまざまなイノベーションやイニシアチブについて知ることができる。

「この体験は魅力的で没入感があるだけでなく、世界的な課題に取り組むために必要なエネルギーを提供するアイデアであり、この体験が、対話と交流のきっかけになることを期待しています」

※パビリオンのプレビュー動画は以下を確認しよう

万博がもたらす大いなるインスピレーション

大阪・関西万博の準備は急ピッチで進められ、日本全国でその存在感を示し始めているが、より良い未来のために、共通の立場で手を取り合い、アイデアを出し合うというコンセプトを、いかに具現化して、一般の人々の心を動かすのだろうか。

カウパースは「大阪・関西万博は文字通りの意味でも、間接的にも、大きなリターンをもたらすと信じています」と言う。

「より持続可能で循環型の経済活動を促すという点で、その影響は計り知れません。それ以上に重要なのは、大阪・関西万博が人々にインスピレーションを与える力を持っていることです。世界全体が崩壊しつつあるように感じられる今、世界が一堂に会して前向きな解決策について6カ月間話し合うイベントを開催すること自体が重要なのです。それは間違いなく、次の世代にインスピレーションを与えることにつながるでしょう」

これは、日本が以前から恩恵を受けてきたダイナミズムである。「私が大阪でお会いした年配の方々の多くは、1970年に行われた『大阪万博』での経験について感慨深げに話してくれます。世界初の携帯電話を見てエンジニアになりたいと思った、アメリカ館で月の石を見て宇宙飛行士になりたいと思った、などの話です」

では、大阪・関西万博の「月の石」は何になるのか。

「日本とオランダは医療分野で何世紀もの歴史を共有しており、その協力関係は現在も続いています。例えば、再生医療に特化したオランダの大学や企業の官民連携組織であるRegMed XBは、「未来医療国際拠点Nakanoshima Qross(中之島クロス)」の理事長・澤芳樹と協力しています。iPS細胞(幹細胞の一種)から心臓シートを開発した澤は、再生医療の世界ではまさにロックスターです」

彼はこの心臓シートを使って、iPS細胞から作られたミニチュアの人工心臓を作る。実際、2025年の大阪・関西万博では、鼓動するミニチュアの人工心臓が展示される予定だ。インスピレーションが湧いてきただろうか。

大阪・関西万博の会場で、刺激的な体験をしてみてほしい。

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