大阪と和歌山の境を東西に走る和泉山脈、大阪と奈良の境に南北にそびえる金剛山地。総延長112キロメートルにおよぶこの峰々一帯は「葛城」と呼ばれ、多くの神々が住む山として人々に崇められてきた。修験道(しゅげんどう)の開祖といわれている役行者(えんのぎょうじゃ)が、最初に修行を積んだのがこの地だ。
役行者は、この地に法華経の経典を28カ所に埋納したと伝えられており、その法華経が納められた経塚や滝、巨石、寺社、祠(ほこら)など、和歌山県和歌山市加太から大阪府柏原市の大和川・亀の瀬までを巡る修行を総称し「葛城修験」と呼ぶ。最初の経塚である「序品(じょほん)」は、和歌山県の無人島「友ヶ島」にあり、山岳信仰である修験道では非常に珍しく、海から始まるのが特徴的だ。
葛城修験の峰々は低山が多く初心者でも比較的アクセスしやすいが、例えば「犬鳴山七宝瀧寺」が実施する1日修験体験では、「滝行」や岩場から身を乗り出す「覗き」など、厳しい修行の一端も体験できる。また、最終28番経塚の「亀岩」がある「亀の瀬」は、葛城修験のほか、もう1件の日本遺産にも登録されている。