繁華街であると同時にオフィス街でもある大阪の梅田。昼間に外を歩けば、せわしないビジネスパーソンの姿に多く遭遇する。しかし、「新梅田食道街」の奥へと歩みを進めると、外とは全く違う時間が流れる。
カウンターだけの狭い店内で、人々が肩を寄せ合うようにして酒をたしなむ。平日、しかも真っ昼間だというのに「初音」はすでに満員。それでも新しい客が来れば、誰からともなく自然と詰めていき、1人分のスペースが出来上がるのだから不思議だ。
物価が上がり続けている中でも、料理と飲み物ともに「300円均一(税込み)」で提供する。一番人気のおでんと串カツなどは、それぞれ2品で300円である。ビールを片手に、味の染みた「大根」や味わい深い「牛すじ」おでんに舌鼓。そして揚げたての串カツは「鶏しそ巻き」の後に「紅しょうが」で口の中をサッパリさせる。それでも、1,000円でお釣りがくるのだ。
「気軽にパッと立ち寄ってもらえるようなお店に」と、かっぽうから立ち飲みスタイルにチェンジしたのが約20年前。着実にファンが増え、今では「週5で通ってます」というつわものもいる。
常連が多くても気軽さが失われないのは、訪れる人々の良さもさることながら、やはりおかみの存在が大きいだろう。カウンターの中でチャキチャキと動き続け、常にその場の全員に目を配る。ハスキーボイスの大阪弁で響く「何する?」が酔った耳に心地よい。