北日本の宮城県にある小さな町の沿岸には、260本もの松に覆われた石灰岩の小さな島々が、どこまでも穏やかな入り江に点々と散らばっている。その景色を岸から小さな五大堂の隣に立って眺めると、霞がかった陽光と青い海がまさに北斎の浮世絵のようだ。フェリーに乗って、島々や点在するカキの養殖場の間を縫いながら進んで行くと、まるで自分が絵の中に溶け込んだかのように思えてくる。
これらの島々は、昔から松島を様々な方法で守ってきた。かつて侍は、海から攻めてくる敵をここから見張り、2011年3月には、近隣の多くの町を破壊した津波に対して緩衝帯の役割を果たした。とはいえ、松島も無傷ではなかった。フェリー乗り場には、半分水に浸かったバスなど当時の様子を記録した写真が置かれている。それでも、松島の町はほとんど無傷に美しいまま震災を乗り切った。