タイムアウト東京 > アート&カルチャー > 東京を創訳する > 第6回『鮨と江戸前』
テキスト:船曳建夫
これまで5回にかけて、地勢、皇居、遠くの富士山と、東京・江戸という舞台を説いてきたが、今回はその最後となる、海について解説する。
海に面している大都市は世界に他にもあるが、と書きだして、実はあまり無いことに気が付いた。ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、とアメリカばかりで、リオデジャネイロもあるが、あとは、バルセロナでもマルセイユでも中都市の規模である。日本は大阪、名古屋と大きな都市はみな海に面しているので、日本人の私には他の国でもそうだろう、という固定観念があった。日本は島国なのだ。大都市に必要な流通は、まずは船による海運だった。ところが、東京湾は船が往来するだけでなく、そこで漁業が行われる「鮨の海」なのだ。