なんで彼らは英語で歌っているんだい
—新作『Cubic』発売に際してワンマンツアーが2月から始まります。作品がリリースされた11月から現在までも、mouse on the keysとアメリカツアーを回ったりと多くのライブをしてらっしゃいますが、『Cubic』制作で得た手応えはどういったものですか。
井澤惇(Bass):『Cubic』を出すまでの4、5年間くらい、セットリストの1曲目が変わっていなかったんですよ。今回のワンマンツアー前にライブを増やした理由は、『Cubic』の曲を2月までにライブ感を出してできるようにするため。そのためにセットリストの1曲目も変えるチャレンジをしてみたり。たかが曲順かもしれないですが、それだけでもバンドにとっては凄い変化なんです。発売後の数ヶ月はそういったことを試す期間ではありましたね。
武田信幸(Guitar):今回、『Warp』という(武田自身の)歌の入った曲があるんですが、この曲なんかは歌の扱いを含めて、発売後のライブでさらにブラッシュアップさせましたね。あとは、今のところはこの曲をやる前はMCで説明した方が良いんだな、とか。そういうことを試して、判断していますね。
—『Cubic』は全体的に、これまでになく風通しの良いサウンドになっている点が印象的でした。
武田:前作がPCベースでの制作で、目一杯音が入った状態から削っていくという作業の結果だったんですね。ただ、たとえばギターが4本重なっていたりと、ライブでそれらの曲をやるときに再現に無理が出たりした。なので、今回は最小のところから作り、少しずつ足していって、タイトに研ぎ澄まされた音しか入れていないんですね。空間を感じるプロダクションになっていると思います。
井澤:ミックスにおいても、これまでは派手にすることが念頭にあったけれど、今回は奥行きを出すということがテーマにありました。そこが風通しの良さに繋がっているのかもしれない。なので、音の置き方や、持ち上げるのではなくて抑えて行く方法は前回までと全然違いますね。
—『Inside the Silence』や『Blackbox』のような間奏曲的な曲が入っていますが、ダウンロードで1曲単位で聴かれたり、買われたりが多い状況が多いなかで、あくまでアルバムをこういった構成にしたのは、やはりアルバムというフォーマットにこだわりがあるからですか。
武田:そうですね。ライブって1曲では成り立たないじゃないですか。流れがあって、曲が輝いたりする。それと同じで、アルバムにも流れは必要だと思っています。
井澤:数曲でき上がって、曲順をどうしようかという話になるわけです。このドラムにはゆっくりと繋げていきたいとか、この曲とこの曲の間には何秒間か空けたいとか、ビートのない曲を挟みたいとか。そういったイメージからまた曲を作っていく。曲の流れというのはすごく大事です。
武田:相互作用があると思うんですよ。曲を引き立たせることを考える。昔から、陰と陽の関係をとても大事にしてきたバンドなんで。
井澤:その点では、『スポティファイ』とかの定額配信サービスは少し悲しいけどね。無料会員だとシャッフル再生になっちゃうとか。
武田:悲しいですけど、だからこそライブに価値が出ると思う。ライブに行けば、コンテンツ(曲)を一個一個、バラバラに聴くよりも、何倍も感動があるということに気がつくかもしれない。
—『Warp』という曲は、武田さんが初めてボーカルをとった曲ですが、歌詞を日本語にしたのはなぜですか。インストバンドであることを武器に海外進出したLITEが歌ものをやるのであれば、英語詞のほうが良いのではという意見もありそうですが。
武田:当然日本語、って感じですね。ようやく我々は海外でもそこそこ認知されてきたんですが、やっぱり「日本のバンド」として見られているんですね。日本って、ガラパゴス的な発展を遂げているバンドがいて、僕らもそのひとつだと思っているんです。だから、日本的な部分をあえて押し出していって、どんな反応が返ってくるのかなという思いもありました。
—海外進出の際に英語詞に切り替えるアーティストもいますが、そうではなく。
武田:海外に行けば行くほど、日本人が英語で歌うことの摩擦のようなものは感じますね。「なんで彼らは英語で歌っているんだい」「あれは英語なのか?」という意見は、現地の人からよく聞きましたね。