カイザー雪
Photograph by Cody T. Williams
Photograph by Cody T. Williams

インタビュー:カイザー雪

日本のレズビアンコミュニティのキーパーソンが語る、日本における同性婚の可能性

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近年、アジアで初めてタイが同性婚の合法化に向けて活発な動きを見せている。しかし日本はというと、結婚はもちろん、それ同等のパートナーシップすら存在しない上、合法化に向けた動きもあまり見られていない。今回は日本のレズビアンコミュニティのキーパーソンで、昨年カリフォルニア州で結婚を果たしたカイザー雪氏に日本における同性婚の可能性を聞いてみた。

「同性婚をしての壁や困難はアメリカでは全くありませんでしたが、日本では数々ありました。たとえば、海外で結婚した後、日本で登録をする必要がありますが、私の場合は相手が同性なため、区役所に相談した結果、断られました。つきまして、私は現在既婚者ですが、日本では独身扱いになってしまっています。日本に住まない限りとくに問題はないかもしれませんが、もしいつか、妻と日本で暮らしたいと感じた場合、妻と一緒には住めないのです。通常異性カップルであれば、配偶者ビザを申請すれば外国人のパートナーも一緒に生活できますが、同性愛者の場合は、配偶者ビザが申請できませんので、一緒に日本に住むことは不可能です。また、私が帰国中、何か事故などが起こった場合も、妻は日本では家族として認められず、私の意識など無い限り病院などでは付き添ってもらえないでしょう」と語るのは、サンフランシスコ在住のカイザー雪氏。

ジュネーブ国立大学の文学部を卒業後、2001 年に東京大学大学院に留学し、イタリアのファッションブランドの日本PR・エリアマネージャーとして勤務し、 2006年の独立後、フリーランスのPRやライター、インポート会社のコンサルタントなどに携わる。その傍ら、2007~2013年にレズビアン&クィアカルチャーWebマガジン『TokyoWrestling.com』を創始・運営し、日本初のBOI写真集&インタビュー本『Tokyo BOIS!』を写真家戸崎美和とリリース。2012年秋には、日本初レズビアン ファッション ジャーナル『Tokyo Finger Bang Style』も発行するなど、さまざまな活動を通して、LGBTコミュニティの啓発活動に携わってきた。

アメリカ人の恋人との結婚を機に2013年末よりサンフランシスコに移住し、現在はアメリカと日本、スイスを行き来する生活を送っている。同性婚に至るまでの過程に関して聞いてみると「 アメリカの場合、同性カップルに限らず、偽造結婚を避けるため、提出が必要な書類の量など非常に多く配偶者ビザを申請すること自体結構大変でした。そのため、弁護士を起用して申請するのが割と主流で、費用も結構かかります!」という苦労も。しかし、ずっと拒否されていた権利を得ることができた喜びの方が強いのだとか。

「昨年の6月末にそのDOMA法が廃止されるといった、17年ぶりに歴史的な法改正が行われ、やっと私たちのような国際同性カップルもアメリカで暮らせることになりました。二人の間で自然に結婚を意識することになりましたが、私はまだアメリカに住んだことがありませんでしたので、自分の出身地であり同性パートナーシップ法が執行されているスイスでの生活も視野に入れていましたが、スイスは同性結婚ではなくパートナーシップ制度ですので、最終的にはアメリカを選びました。パートナーシップ制度は同性愛者のために作った『代理』のような結婚で権利も比較的少ないのに比べ、同性結婚は異性結婚と全く同じですし、同性結婚のほうが平等だと感じたからです」

日本でも年々、同性婚の支持者が増えてきているが、法的に整うまでどれくらい掛かるだろうか。同氏は、「最近、ヨーロッパの多くの国が同性婚を導入していて、アメリカでも同性婚が行える州が急増しているので(現在、約3分の1)、海外を見ている私には、日本の政治やメディアでの動きを見る限り、そのビジビリティと議論されている量や世論の意識が海外と比較してあまりにも少ないので、遠く感じます。ただ、外国人と同性結婚をして海外で配偶者ビザを得て暮らしている日本人が最近増えていて、昨年ディズニーランドで初の同性ウェディングを行って大きな話題を集めた東小雪さん・増原ひろこさんカップルなど、確実に日本でも議論や話題にはなってきているので、意外に早く導入されるかもしれないと期待しています」と前向きにも捉えている。

「自分の出身のスイスでもつい15年前まではまだ偏見がありましたが、今ではパートナーシップ制度があり、最近では同性結婚も議論に上がるなど、そういった変化を見続けてきたわけですから、日本でも時間の問題だと思います」

時間がかかるかもしれないが、日本の同性婚への意識も少しずつ変わってきているのかもしれない。

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