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CITY COUNTRY CITY
値段:¥¥
音量:★★
照度:★★★★
出会い:★★★
ポイント:海外買い付けのレコードを販売
この一杯:季節によってオススメするボトルビール
テキスト:高岡謙太郎
定番スポットや老舗バー、注目の新店まで、魅力的なミュージックスポットを、店主、スタッフ、常連客がセレクトしたミュージックプレイリストとともに紹介する連載企画『TOKYO MUSIC BOX』。
第10回は、中古レコードショップとカフェバーが融合した珍しい営業スタイルで10年目を迎える、下北沢駅前のCITY COUNTRY CITY(シティカントリーシティ)。屋根裏の隠れ家を思わせる店内には、下北沢文化の良心を集めたような居心地の良さがあり、セレクトされたレコードが耳元をくすぐるなか、くつろいで食事も楽しめる。
下北沢駅南口から徒歩3分と、立地の良い雑居ビル。4階までエレベーターで上がると、入り口には木箱に入ったレコードがずらりと並ぶ。店内の数千枚のレコードから厳選されたBGMには、昼はゆったりしたアコースティック、夜はアルコールのノリに合わせたミドルテンポでグルーヴのある楽曲が流れ、ほどよくリラックスさせてくれる。飲食は生麺を使った明太子のパスタが定番で、日替わりメニューも人気だ。
白を基調にしたナチュラルな佇まいの店内は、明るく開放的な雰囲気。店全体がガラス窓で覆われ、日中は日光が心地よく差し込み、高みから街の喧騒を望むことができる。18時までは禁煙というのも居心地の良さのひとつ。ここには近隣のミュージシャンや界隈の音楽ファンだけでなく、駅前に劇場があることから、劇団関係者、お笑い芸人ファンまでが集う。女性がひとりで入りやすく、待ち合わせやデートにも最適だろう。
周知のとおり、この店のオーナーはサニーデイサービスや曽我部恵一BANDで活躍するシンガーソングライター、曽我部恵一。そして店長を勤める平田立朗は、元々は曽我部恵一のファンだったという。その昔、三宿のクラブWebで行われていたパーティで知り合った2人は、レコードを一緒に買いに行く仲にまで発展する。そこから平田は、2004年に始まった曽我部恵一のレーベルROSE RECORDSを手伝うことに。酒の席での「レコード屋をやりたいね」という話題が膨らんで、友達も集まれるようにするためカフェも併設して2006年に開店に至ったそうだ。ファンがアーティストと親密になるという、極めて稀なエピソードを聞かせてくれた。
店頭で扱う中古アナログレコードは、ディスコ、ロック、ソウル、ジャズ、レアグルーヴ、ワールド、レゲエ、和モノなど、オールジャンルのレコードをボーダーレスに取り揃える。年数回の海外での買い付けによりセレクトされ、おすすめのレコードには手書きのコメントが付けられる。店長の人柄の現れた筆跡に思わず読み入ってしまう。
ここは曽我部恵一の店として知られているが、レコードのバイヤーはダンスミュージックにも造詣が深い。それは店名が、ディスコの殿堂であるニューヨークのクラブLOFTの、ガラージクラシックとして有名なWarの名曲『City, Country, City』から取られていることからも察することができる。店内を見渡すと壁面には、足を運んだ国内外のアーティストのサインが記され、LOFTの始祖であるDavid Mancuso、デトロイトハウスのリヴィングレジェンドTheo Parrish、フジロックでもプレイするレコードディガーPSYCHEMAGIKなどが名を連ねる。なお、夜間の店内では日によってDJパーティも行われる。レコードの購入客にイベントを持ちかけることもあるという。レコード店とカフェバーという複合的な要素によって生まれるコミュニケーションの奥深さが、この店の魅力と言えるだろう。
そんなCITY COUNTRY CITYの初回のプレイリストは、ブラジル音楽でジャジーでゆるやかなものからダンサブルな楽曲を10曲まとめたもの。パット・メセニーが尊敬するコンテンポラリーギタリストであり歌手のトニーニョ・オルタの少ない音数から徐々に始まり、ベースラインがファンキーなディスコテイストのHyldon『Homem Pássaro』から高揚感がある流れに。ブラジル音楽からの影響が色濃いアメリカのジャズギタリスト、パット・メセニー・グループ『Last Train Home』でサウダージ感を漂わせながら終わる。気になる曲があれば店内のレコードボックスから探すのもあり。「当店が4階という事も有り、ブラジル音楽で空模様、陽が差す時間から哀愁を帯びた夕暮れというような感じでセレクトさせていただきました」(CCC 平田)
※プレイリストリンク 先:KKBOX
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