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オリンピックはスポーツだけではない、野田秀樹の語る東京キャラバンとは

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Time Out Tokyo Editors
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Originally posted June 3 2015

会場についてもさることながら、そもそも開催することに対しても賛否両論かまびすしい『東京オリンピック パラリンピック』。単なるスポーツの祭典にしてしまっては、それこそもったいないと、2020年に向けた様々な取り組みがいよいよ動き出そうとしている。舛添要一都知事は、2012年のロンドン大会では「文化の面でも画期的なこと」を行っていたとして、東京大会では「文化でも世界一を目指す」と意欲を見せている。その文化面でのリーディングプログラム『東京キャラバン』について、2015年6月3日(水)、舛添都知事は野田秀樹、日比野克彦、名和晃平らと意見交換会を行った。

『東京キャラバン』とは、東京芸術劇場の藝術監督も務める希代の劇作家/演出家の野田秀樹が、2020年に開催予定の『東京オリンピック パラリンピック』に向けて構想する、大掛かりなプログラムだ。この日、先の東京オリンピックの際にも多大なる貢献を果たした丹下健三による設計の東京都庁では、野田とともにプロジェクトを進める2名のアーティスト、日比野克彦と名和晃平が集まり、『東京キャラバン』の展開について舛添都知事と話し合った。

左から名和晃平、日比野克彦、野田秀樹、舛添要一

2016年、リオデジャネイロ大会の閉会式の日にブラジルからの出発を目指す『東京キャラバン』とは、ダンスや音楽、美術、映像あるいは大道芸やストリートパフォーマンスといったものまで、様々な見世物的コンテンツを積んだ屋台のようなものを想定している。文化は人の移動、交通から生じるものだとして、幾台もの『東京キャラバン』が各地でパフォーマンスを行うとともに、現地の文化とも交流していく。そして、2020年に向けて気運を高めるとともに、2020年で終わってしまうのではない、持続的な文化の形成を見越しているという。今年の10月頃には試験的に1ヶ所での展開を予定している。

野田のこの壮大な企画に、名和がビジュアル面で、日比野がネットワーク面で参加する。日比野の仕事については、かつてのバブル期に賑わせた作品制作よりも、金沢21世紀美術館などでの地域密着型プロジェクトのような近年の活動を想起すればよいだろうか。日比野は自身の経験も踏まえ、障害者のアートに関するプロジェクトも進行中とあって、そちらにも期待を寄せたい。ほか2名に比べ若い名和には、大抜擢といった印象も受ける向きもあるかもしれないが、鹿の剥製の表面にガラスの球体をびっしりと付けた『BEADS』シリーズなどを観れば首肯できる配役だ。圧倒的なビジュアルイメージのなかに、生々しいリアルとヴァーチャルのあわいを行くような現代的なセンスが感じられる、日本の現代美術を代表する作家だ。今回は「メタモルフォーゼ(変容)」をコンセプトに据えたという。

多種多様な神話とアトラクションを積んだ幾台もの華やかな『東京キャラバン』が、日本中での巡業を終えて、2020年の開会式の日に競技場へと集結し、最高の盛り上がりのなか、祭りの中心オリンピックの火ぶたが切られる。野田得意の「物語」としては、確かに圧巻だが、課題も少なくなさそうだ。プロジェクトの具体的な面白さを左右するであろうコンテンツが、まったくといって決まっていなさそうである点、ある意味で中央から送られてくる『東京キャラバン』と、周縁たる地方とがどのように交流を行っていくのかという点、『東京キャラバン』の台数が揃わなければ見劣りしそうである一方、それぞれの内容の質をどのように担保するのかという点。不安要素は枚挙にいとまがないが、日常のなかに強烈な幻想を潜り込ませ、観客を陶酔の夢に包んできた野田のこと、2020年は日本中に大きな夢を見せてほしいところだ。

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