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アーティストとしての村上隆は、国際的な展覧会をはじめ、ルイ・ヴィトンやカニエ・ウェストとのコラボレーションを通じて2000年代に名を上げたが、彼はそうしたアーティストとしての自分を、コレクターとしての自分とは切り離して考えている。コレクターとしての村上隆は、展示してあるコレクションについて「僕が芸術を理解する試金石として集めた作品」と、展覧会の挨拶文の中で述べている。
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まことにもって広範な理解である。もし、この展覧会のタイトルに出てくるすべての名前を知らなくても気にする必要はない。それは、村上隆コレクション展に出展される芸術作品の形は、陶芸から絵画、写真、実験映画まで多岐にわたり、また、複数世紀にまたがっているからだ(紀元前12000年ごろまで遡る作品から、ほんの数ヶ月前に作られた作品まで展示されている)。村上隆が言っているように、あなたが展示されているすべての作品を気に入るとは言い切れないが、それと同じように、あなたの興味をそそる作品がまったくないと完全に否定することもできないのだ。
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横浜美術館の大広間数個分を埋め尽くす同展では、いくつかの興味深い名前のカテゴリーの中でコレクションが展示されている。なかには、「村上隆の脳内世界」というタイトルが付いたカテゴリーまであるのだ。様々なジャンルと時代の作品が横にも、下にも、ときには、別の作品の上にさえぎっしりと置かれている。遠くから見た方がよく見える巨大な作品が、近づかないとよく見えない作品の横に置いてあったりもする。それどころか、フォークミュージックが縄文式土器をテーマにした部屋に響いていさえする。ふと、完全な無秩序のように感じられても無理はない。
しかしそういう場所なのだ。村上隆のスーパーフラットの理論でこの個展を紹介するとしたら、「工芸品や芸術品を歴史、ジャンル、既存の分類体系の制約から解き放つ」。そして、それらを芸術家自らが作る芸術のシチューに混ぜ合わせるのだ。
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さらに、村上は我々を招いてこのスーパーフラットという芸術のシチュー作りに加担させようとしている。セクションの1つに、芸術家のデヴィッド・シュリグリーが制作した『ヌードモデル(2012年)』がイーゼルや画材に囲まれながら展示してあるのだが、このたまに瞬きをしたり、バケツにおしっこをする大きな裸の男のフィギュアを来場者が描くと、その絵が後から壁に展示されるのだ。つまり、あなたが描いたバケツにおしっこをする男の絵が、すぐに曾我蕭白やアンディ・ウォーホル、そして奈良美智の作品と同じギャラリーに架けられるかもしれないのだ。
これが動的なスーパーフラットなのだという以外、何なのか私には分からない。
『村上隆のスーパーフラット・コレクション―蕭白、魯山人からキーファーまで―』の詳しい情報はこちら
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