見せ方としては完全にライブ
Tomo Hirata(以下、TH):日本でのEDMは、『Ultra Japan』などを除けばほとんどの場合、海外と直接連動しているとは言い辛い状況で、基本的にはオールミックス系ですよね。ヒット曲を連続でかけているようなクラブのDJのものになっている。
鹿野:それはざっくり言うと、「流行ものとしてのEDM」と「EDMマナー」の違いということですか?
TH:そうです。流行ものとしてTOP40をかけるDJがEDMを取り入れている、というのが日本国中に広まっているというのが現状です。
鹿野:これ知りたかったことなんですけど、EDMって、ジャンルのマナーとかカテゴリーというものが希薄であることが、逆にここまでメインストリームでポップになっている要因のひとつであると思うのだけれど、でも、本当はEDMにもマナーはあると。
TH:あります。
鹿野:ZEDDみたいな何十億も稼いでいるDJにも、何百人しか集まらないパーティーにも共通して、それはあるわけですね。
TH:はい。基本的にEDMの最大の特徴は、プロデューサー文化なんですよ。
鹿野:あぁ、そうか。そこ重要ですよね。
TH:今までのクラブカルチャーは、DJ文化ですよね。ようするに、例えば80年代以降のハウスミュージックの流れのものでは、自分の曲も大事だけど、基本的には他人の曲をかけて一晩を構成する。Masters At WorkやDAVID MORALESといった時代を象徴するアーティストたちにしても、持ち曲はあるわけですけど、それだけじゃなくてほかの人の曲も沢山かけて、プレイを構成する。DJというのはそういった選曲家的な立ち位置が大きかった。
それが変化したのは、2000年代後半からが特に顕著なんですけど、2000年代前半に2 many dj’sが現れて、従来のハウスミュージックのロングミックスはつまらないと言い始めて、マッシュアップとかをやりはじめた。
そこからエレクトロが派生するんですが、エレクトロっていうのはある意味ではコマーシャル化したハウスへのカウンターカルチャーだったわけです。そのエレクトロの流れから、トランスだったりハウスだったりが合流してできたのが今のEDMシーンなんですよ。で、その最大の特徴に、EDMのDJたちは基本的に自分が作ったオリジナル曲を中心にプレイすることがある。少なくとも半分以上がそういうスタイル。
鹿野:スティーブ・アオキなんかもセットリストの7割以上が自分の曲で、パフォーマンスがDJでもあり、でも基本はライブであるという。
TH:ZEDDとかもそう。言ってみれば、自分の曲を使ったDJというスタイルでのコンサートというか……
鹿野:少なくとも見せ方としては完全にライブというショーですよね。だからクラブよりもフェスが似合う。
TH:PCでの楽曲制作が手軽になり、若い人たちがギターを買うよりも安く、作曲環境を揃えることができるようになったときに、じゃあダンスミュージック作ってみよう、今だったらEDMかな、となるというところから爆発的に広がったものですから。