日本の伝統的高級料理、懐石を味わえる場所は世界中でもほとんど見つからないだろう。福田家は本格的な懐石料理が楽しめる名店だ。創立1939年のこの料亭は、移転や改築を経て現在は創業者の孫が経営している。
料亭前に控えめに立つ門からはその飾らない料理の質がうかがえる。北大路魯山人が定宿としていた当時の趣は今はほとんど感じることはできないが、現在でも折に触れ魯山人の作った食器の原物を使用している。
畳と障子のある伝統的な部屋からは時間を超えた日本の優雅さが感じられる。足下が快適な掘り炬燵の席も、しばしば会議の席としても利用できる。
ほとんど1口、あるいは2口で食べ終わってしまうほどの小さくて繊細な季節の料理の数々が、着物姿の女中により運ばれてくる。ポン酢の堀に浮かぶ白子豆腐の上にはウニが乗り、コノワタなどの和食独特なメニューも楽しめる。 中国の影響をうかがわせる料理もある。フカヒレの乗った鯛は生姜のタレで味付けされている。粗めの食感に生姜のスパイスがきいているが、それによって味もマイルドで食べやすくなっている。日本人の大好きななめこの味噌汁のようなシンプルな料理でさえ、絶品である。刺身と天ぷらの小さなコース料理においては非の打ち所がない。
デザートは完璧に熟したフルーツが、魯山人の皿に盛りつけられて出てきた。 もちろん、このレベルの料理となると安いものではない。福田家は東京でも最も値の張るレストランの一つだ。