資生堂パーラー
Photo: Shiseido Parlour
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東京、文豪が愛した料理店9選

浅草や銀座、人形町などで堪能する文学の味

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テキスト:松崎雅子 and Time Out Tokyo Editors

小説やエッセイを読んだ際、さりげなく登場する料理の名前や描写が、読後にまでも深く印象を残していることはないだろうか。作品に叙情的な厚みを加え、強烈なイメージとなって脳裏に焼き付く料理は、作家が思い入れや意図を持って配置した、作品の重要なエッセンスとも言えるだろう。

食に強いこだわりを持つ作家は多く、彼らの著作に贔屓(ひいき)の料理店の名前が繰り返し出てくることもよくある。ここでは、明治~現代の文豪と関係深い料理店を紹介する。下町の洋食店や老舗の和食店など、いずれも文豪が活躍した当時から営業を続ける老舗ぞろい。往時に想いをはせながら、長きにわたって受け継がれてきた味を堪能してほしい。

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  • 汐留

1880年創業の老舗すき焼き屋。永井荷風や獅子文六らの作品の中にも登場する名店で、多くの文豪に愛されてきた。当初は味噌が主流だったすき焼きなのだが、今朝では創業時から現代に通ずる醤油ベースの割り下を使用してきた。

ランチは、ごはんや味噌わん、香物などがついた「お昼のすき焼定食」(2,750円)で、リーズナブルに味わえる。ディナーに利用するなら、ソムリエの資格をもつ5代目の藤森朗にすき焼きに合うワインをセレクトしてもらいながら、贅沢な時間を過ごすというのもまたいい。

  • 神保町

怪奇小説家の江戸川乱歩がひいきにした店として知られる、天ぷら屋はちまき。昭和初期に屋台からスタートし、1945年から神保町で営業を開始した。店に入るとごま油の香ばしい香りに食欲がそそられるだろう。老舗だが価格は財布に優しく、定番の『天丼』は800円とリーズナブルに味わえる。少し贅沢したいなら、エビ2本と身の大きなアナゴ、野菜の天ぷら2種、アナゴの骨せんべいがのった『穴子海老天丼』(1,400円)もおすすめだ。

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  • 目黒
  • 価格 2/4
  • 5 5 つ星中
  • お勧め

小説家の池波正太郎も通ったという、創業50年以上の老舗とんかつ屋。とんかつはじっくり2、30分かけて揚げるスタイルで、衣のパリッとした食感が名物。

無駄な脂身は無い味わいなので、がっつりとした脂感が欲しい人はヒレよりロースかつがおすすめ。つけあわせのライス、豚汁、キャベツはおかわり自由。

豚汁のおいしさにも定評があるので、じっくり味わってほしい。

  • 銀座
  • 価格 2/4

1866年に創業したウナギ料理店の竹葉亭。永井荷風の『断腸亭日乗』に銀座店がしばしば登場するほか、夏目漱石や泉鏡花、林芙美子らの作品にも登場しており、明治より誰もが知る人気店であったことが想像できる。

同店で息子の見合いを行ったという歌人の斉藤茂吉も常連の1人だ。名物は、ふっくらとした食感のウナギが乗った「うなぎ丼」。震災、戦火も乗り越え、100年以上にわたって継ぎ足されてきたタレが塗られたウナギからは、甘く芳ばしい香りが立ちのぼり、食欲を刺激する。

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  • 銀座
  • 価格 2/4

西洋料理店の草分けとして知られる資生堂パーラーは、前身の「ソーダファウンテン」時代より、永井荷風や谷崎潤一郎など多くの文人が通った名店だ。

食通として有名な池波正太郎も、この店を愛した1人。著書『散歩のとき何か食べたくなって』では、「戦前の銀座が、いまも尚、味に残っている」として、少年時代に初めて訪れた際の感動と、洗練された料理への想いを語っている。

「ミートクロケット」や「チキンライス」など、池波も食した伝統的メニューを味わいつつ、銀座の今昔に想いをはせてみては。

  • 新橋
  • 価格 3/4

三島由紀夫が最後の晩餐として選んだ鳥割烹の店。創業は1909年。三島は、同店の伝統的な鳥料理を愛し、足繁く通っていたという。

決起前夜に食した軍鶏鍋は、現在も夜の「わ」コースで味わえる。コースは8,000円からで、全6~9品の4種類のコースを揃える。気軽に訪れやすい昼時は、ひき肉を使用した親子丼の「かま定食」(1,000円)を提供。奥久滋軍鶏と東京軍鶏、地養鶏、アイガモをブレンドしたひき肉は甘くしっとりと味付けられ、懐かしい味わいだ。

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  • 水道橋
  • 価格 2/4

川端康成や三島由紀夫らが通った、1962年創業のとんかつ専門店。古木や無垢材(むくざい)を使った店内には、骨董や書、拓本などが飾られ、歴史ある古民家のような雰囲気が流れる。

自慢のとんかつに使用する肉は、あえて銘柄などを限定せずその時期ベストなものをセレクト。揚げ油にはコーン油とごま油をブレンドしており、低温で煮るようにじっくりと揚げ、肉の旨みを最大限に引き出している。定食では、白米と青しそご飯が選択できるのも嬉しい。

  • 銀座
  • 価格 2/4

洋食の老舗である煉瓦亭も、多くの文化人が愛した店として知られている。『楡家(にれけ)の人びと』や『どくとるマンボウ』シリーズで知られる作家、北杜夫もその1人。

『マンボウ哀愁のヨーロッパ再訪記』では、「ほどよく冷えたビールの小ビンに、カリッと揚げたての上カツレツとピカピカのライス、そしてアツアツのコーヒー。まさしく銀座の昼食バンザイ!と叫びたくなってしまう美味しさ」と紹介している。

北も絶賛した、サクサクとした衣の音が響きわたるほどの揚げたて食感は、ぜひ一度体験してほしい。

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  • 人形町
  • 価格 1/4
芳味亭
芳味亭

2019年にリニューアル移転した「芳味亭」は、1933年創業の洋食店。戦後を代表する脚本家であり小説家、エッセイストでもあった向田邦子は、47歳にして人形町を初めて訪れ、以来たびたび同店にも足を運んだという。

昔懐かしい味の「ビーフスチュー」や「新潟県産雪室ポークステーキ」など、定番洋食を提供。初めて訪ねるなら、コロッケやハンバーグ、海老フライなどの人気メニューが一度に味わえる「洋食弁当」がおすすめだ。

もっと食を楽しむなら

無数のレストランが存在する都市、東京。世界と比較しても多くのミシュランスターを有し、外食時にマズい食事に遭遇する確率は低い。ほとんどの店は品質、そつのないサービス、新鮮な季節の食材で張り合っているが、東京にあるいくつかのレストランは、そこから大分逸れた異なる路線を進んでいる。好奇心クレイジーの路線である。

正直な所、街中をしらみつぶしに調査をしたわけではないが、一風変わったフードやドリンク、サービスを提供するレストランを紹介する。

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